2021年の読書を振り返る~93冊/25746頁

10 1月

2021年の読書メーター
読んだ本の数:93
読んだページ数:25746
ナイス数:3167

ヴィクトリアン・ホテルヴィクトリアン・ホテル感想
超高級ホテルに集う人々の姿、人生が楽しかった。客室数が300近くもあれば、いろんな人もいるものだ。ホテルの中だけでこれほど楽しい物語が描けるなんて。でも、私はいつ頃から迷い込んでいたんだろう。女優に惹かれたから?新人作家の活躍が気になったから?スリの行方が気になったから?それとも・・・。終末になって、本編に描かれた内容は数十年のときが折り重なっていたなんて。そしてそして、あの人は、この人と・・・。何ということだ。ホテル最後の夜に、夢でも見てたようだ。
読了日:12月29日 著者:下村 敦史
最初の質問 (講談社の創作絵本)最初の質問 (講談社の創作絵本)感想
この本の最初の質問。「今日、あなたは知らない空を見上げましたか。」毎日のように見上げている空。わずかに見える青空もあった。でもそれを夜に思い出しているだろうか。「『うつくしい』と、/あなたがためらわずに言えるものは何ですか。/好きな花を七つ、あげられますか。」はて、なんと答えよう?この絵本にはこのような問いかけが次々に出てくる。ページをめくって、質問に出会って答えるのに時間がかかる。読むたびに手が止まり、読むたびに答えも変わっていきそうだ。それでよいのだろうが、何気なく過ごしている自分に驚いてしまう。
読了日:12月28日 著者:長田 弘,いせ ひでこ
赤と青とエスキース赤と青とエスキース感想
いいね。こいう物語は好きだ。エスキースって初めて知った。「下絵」。オーストラリで描かれた「エスキース」がこの物語の「エスキース」。4つの章のタイトル?って思ってたけど、なるほどこうなるんだ。バラバラに思えた各章も、ものだけにとどまらず、全てがつながっていた。下絵からさらに完成されたものに作り上げられていくのが普通なのだろう。私達もいくつもの段階で自分の人生のエスキースを描いてきて、次第に右へ左へ前や時には後ろに揺れながら今を描いている。さてこれからどんなふうに仕上げようか。
読了日:12月21日 著者:青山 美智子
ミカエルの鼓動 (文春e-book)ミカエルの鼓動 (文春e-book)感想
AIとかロボットとか、進歩は目覚ましい。外科手術用ロボットのミカエルとその扱いの第一人者・西條の物語。最小限の切開でロボットを動かし、拡大して見ながら手術が行えれば、多くの患者が救われそうだ。そんな西條の前にドイツから真木が入ったことで、物語は一気に不安に包まれ始める。ロボットを使うのか、外科医の手だけに頼るのか。医療の発展と病院の発展、患者の命をどう救うのか。医師のプライドと救命のための最善の方法は?生きるとは?向日葵の種は偉大だった。
読了日:12月18日 著者:柚月 裕子
母親からの小包はなぜこんなにダサいのか母親からの小包はなぜこんなにダサいのか感想
中に出てくる母親からの小包はたしかにダサいものだった。でもこの6編の話はみんな素晴らしく感動するものだった。我が家でもよく子どもたちに小包をするが、これに近いようなところもある。「最後の小包」なんかは弓香さんとともに涙を流すしかなかった。送られてくるものは、大したものではないけれど、そのものへの思い出やお母さんの気持ちまでが、小さな箱に一緒に詰められている。タイトルを見たときは「えぇーっ!」て思ったけど、読んでよかった。
読了日:12月14日 著者:原田ひ香
オーラの発表会オーラの発表会感想
海松子のちょっと変わった生き方。人の特徴から密かにニックネームをつけて、自分の中だけで楽しんでいるふうでもある。友達はいないというが、「ものまね師」萌音がいつもそばにいてくれ、海松子の相談に乗ってくれたりアドバイスをしてくれたり、頼りになる存在だ。メニューの分析力とか、臭覚の敏感さを生かす仕事が向いてるのではないかと思う。教員は厳しい。一人凧揚げが好きなんて、面白いね。友達と一緒でなくても楽しめるものがあるのは強い。そんな海松子に想いを寄せてくれる人もいるのだから、嬉しいね。
読了日:12月12日 著者:綿矢 りさ
川のほとりで羽化するぼくら川のほとりで羽化するぼくら感想
川にかかる一つの橋を巡る4短編。「わたれない」は子育てを始めた主夫。今の働き方改革か。わからないことばかりの子育てにアドバイスをもらえるのに、ひょんな事から橋が渡れなくなる。「ながれゆく」の天の川にかかる橋でこれほどの物語が作り出せるなんてすごい。「ゆれながら」未来の人間社会! 性の快楽と子孫繁栄。「ひかるほし」高齢者問題。家や土地を守ると言っても認知症になってしまえばどうにもならなくなる。各短編から今の自分の立場や意識を変える勇気を持てば、生き方も変わっていくのだと感じた。
読了日:12月04日 著者:彩瀬 まる
【第165回芥川賞受賞作】彼岸花が咲く島 (文春e-book)【第165回芥川賞受賞作】彼岸花が咲く島 (文春e-book)感想
游娜とどこからかやってきた宇美。2人の女の子は島を治める大ノロになろうと決意。その島は女性しかノロになれない。現在の日本の政治が男性中心で動いているのと対照的。男女で使う言葉も規定され、「うつくしいひのもとことば」を取り戻そうとしている。沖縄あたりの島のように描かれ、彼岸花が毒草でもあるが薬草として使えることで、他国から物を買っている。男友達の拓慈に女語やノロしか知ることのできない歴史を教えるのか。逆の今の日本で女性に政治の地位を与える仕組みを作るのか、宇美たちと考えてほしいと思いつつ読了。
読了日:11月30日 著者:李 琴峰
英語が話せる人はやっている 魔法のイングリッシュルーティン英語が話せる人はやっている 魔法のイングリッシュルーティン感想
60の手習いではないが、興味はありながら、徹底的にはできず、アメリカの音楽・映画などが少しでも聞き取れるといいなと思う程度。だから話すという所まで進めないのだろうが、毎日のルーティンとの内容、twitter、Instagramなどで好きな人をフォローしてその声を拾ってみるなどのアイデアも載っていた。やってみると楽しそうだ。’Nothing is impossible, the word itself says,’I’m possible!’-Audrey Hepburn 私にも「可能」かもしれない。
読了日:11月20日 著者:Miracle Vell Magic
本が紡いだ五つの奇跡本が紡いだ五つの奇跡感想
ほんの数ページ読んだだけで虜にされてしまった。作品中に涼元マサミ作の「さよならドグマ」と重なってしまう。奈緒さんの名前の由来に感動。「奈」にそんな意味があったなんて。編集者としてやり遂げたことで、多くの人に未来への幸せの糸口を与えたね。それぞれに生活の行き詰まりを多少なりとも感じていたところにこの本が出来上がった意義は大きい。書店員の心美さんの第4章に一番感動させられた。最後の読者にこのような展開があるとは。本作の人物同様、私も感動の涙を拭きながらの読了でした。
読了日:11月18日 著者:森沢明夫
巨鳥の影 (文芸書)巨鳥の影 (文芸書)感想
表題作を含めた8短編。巨鳥の声とはすごいね。調べてみるとユネスコの無形文化財として継承が行われているとか、学びたいものだ。「水無月の蟻」はとりつかれたものの最後といえばそれまでかもしれないが、悲しく哀れ。「鏡面の魚」って、試してみたくなる。もちろん魚を泳がせる方だけど。それにしてもうまく裏切られたものだ。そのおかげと言っては何だが、魚を泳がせれたのだから、ま、いいか。「再生の日」どん底に落ちたことから、新たに再生を誓えた。辛い回り道だ。
読了日:11月16日 著者:長岡弘樹
7.5グラムの奇跡7.5グラムの奇跡感想
眼科の機能訓練士として働き始めた野宮。目って、24mm、7.5グラムほどの小さなものなのにその影響はとてつもなく大きいと再認識した。機能訓練士という役割があることも初めてだった。検査で使用される機器もどんどん高性能になっているようだが、ノミーのような訓練士によって患者の状況をより正しく検査結果な反映され凄い。緑内障などで視力を失うことは避けたいものだが、その病気と付き合いながら生きがいを見つける人、精神的なことだとノミーが気づき生きる力を得た患者もあった。病気の中でも生きがいがいかに大切か感じた。
読了日:11月10日 著者:砥上 裕將
ガラスの海を渡る舟ガラスの海を渡る舟感想
道と羽衣子の兄妹がガラス工房を受け継いでいく物語。道は発達障害なのか人の気持ちを察することができない。妹もそんな兄に立腹することが度々だ。道の「人の気持ちなんかわかるわけない」とか「具体的に言ってもらわないとわからない」など確かにそうだと思う。学校からも親からも「みんなと同じように」が日本の常識みたいになっているが、「みんな違う」のだから同じになろうとするとどこかに無理が生じる。ガラス細工に打ち込む道に妹も次第に協力できるようになりよかった。またいい本に出会えた。
読了日:11月04日 著者:寺地 はるな
雨夜の星たち雨夜の星たち感想
三葉雨音さんは他人への感情移入ができないという。小さい時から「変わった子」として母や周りから見られた。勤めていた会社を辞めたのち、霧島から「しごと」を頼まれる。世の中の人はみんな変わっている。変わっているのに他と合わせる人、合わせれない人。三葉は霧島と出会えてよかった。三葉の良さを認めてくれた。それが仕事に生かせた。三葉の姉の言葉もわかる。人は「あの人変わってる」と言う一方で、密かに「自分もあんなふうにできたらいいのに」と思うことがあるものだ。認め会える社会を作りたいものだ。
読了日:11月02日 著者:寺地はるな
サキの忘れ物サキの忘れ物感想
表題作から始まる9短編。どの話も静かに進行しながらなかなか掴み所がない感じ。「サキの忘れ物」は「サキ」に出会えたことで千春の人生が大きく進展する様子がよかった。その後の千春の様子を描いてもらいたい。「喫茶店の周波数」、確かに一人で喫茶店などに行くと周りの会話をついつい楽しんてしまうようなことあるなと思いながら読む。「王国」「河川敷のガゼル」「隣のビル」など生活の中で生きづらさを抱えながら何かに拠り所を見つけようとしている。そうやって自分の世界を持つことも大事だよね。
読了日:10月31日 著者:津村 記久子
蘭方医・宇津木新吾(9)-再燃 (双葉文庫)蘭方医・宇津木新吾(9)-再燃 (双葉文庫)感想
文政13年(1830年)松江藩多岐川家の江戸上屋敷が主な舞台。藩主嘉明という名前が出てくる。こういう時代物に慣れていないのでこのような表現に慣れない。松江藩の藩主は松平家では?松江藩主に嘉明という人物名はないように思う?架空なら松江藩と言わなくても良いのでは?どなたか教えて下さい。松江藩とあらすじにあったので手にしたものからすると、残念。宇津木新吾が事件の真相を明らかにしようと、医者としての活動以上に活躍するのは面白く、武士相手にも強い!
読了日:10月28日 著者:小杉 健治
風神雷神 雷の章風神雷神 雷の章感想
「宗達」は義父の命名と。公家の烏丸光広の誘いで公家の各家に秘蔵される作品により視野を広め、養源院「白象」、相国寺「蔦の細道図」、醍醐寺「源氏物語」、「舞楽図」など活動の幅が広がる様子に惹きつけられた。風を避けるための屏風、雷から身を隠すための屏風。そんな屏風に描かれた宗達の印もない「風神雷神図」を醍醐寺で見つめる宗達の妻美津、本阿弥光悦の娘冴、出雲阿国ら3人がそれぞれ語る「鬼」の姿に涙を誘われた。マハさんの同名小説もエンタメとしては面白かったが、本書は宗達の姿がよく見えてよかった。
読了日:10月23日 著者:柳 広司
風神雷神 風の章風神雷神 風の章感想
原田マハ「風神雷神」に続いて読む。作者よりこんなに異なる物語を楽しめるとは。本書では宗達は「伊年」のまま。出雲阿国、本阿弥光悦らの登場とともに、平家納経修復、光悦とのコラボ作品の鶴や鹿を描いた10m前後の絵巻の制作に培ったノウハウを遺憾なく発揮する伊年の姿が興味深く描かれている。書と紙と絵の作品というだけでなくそれらを作り上げるための技術が高まっていく様子もすごい。紙屋の宗二の能力!お互いの能力を認め引き出し、高め合う姿が美しい。にしても政治で文化までも歪めようとする家康め。
読了日:10月22日 著者:柳 広司
宗棍(琉球空手シリーズ) (集英社文芸単行本)宗棍(琉球空手シリーズ) (集英社文芸単行本)感想
琉球王国で武術を極めていく松村宗棍の物語。空手のような術と読んだ。清国の武術の影響を受けながら、宗棍は薩摩の剣の技も取り込もうとする。子供時代に喧嘩に強かった彼が、真の強さを極めていこうとする姿に引き込まれ一気に読めた。武術の指南を受けるため役人の科に合格するという勉学に励む姿。それに美人のチルーに勝ち妻にできるという幸せな姿。どんどん強くなっていく宗棍に自惚れを戒めてくれた者の存在は大きい。廃藩置県後の日本の術でないという役人に対しての宗棍がかっこよかった。
読了日:10月20日 著者:今野敏
風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)感想
興味深かった。エピローグにある通り、史実にはないが、それでよいではないかと、マハさん。宗達と同世代の原マルティノ、ミケランジェロ・メリージ・デル・カラヴァッジョがイタリアで遭遇し、互いに絵を描くことに情熱を燃やす。遣欧使節と俵屋宗達をリンクさせ、マカオで見つかったという古文書・絵を結びつける。宗達やマルティノらの好奇心や情熱が強く伝わってきた。情報を得るのに時間と命をかけていた当時の人の熱意は、今の私達にあるのだろうか。柳広司の描く「風神雷神」もぜひ読み比べたい。
読了日:10月19日 著者:原田 マハ
風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)感想
博物館での説明から始まったが、生没年不詳の俵屋宗達が子ども時代から描かれ始めて、俄然面白くなってきた。好きなことに没頭できること、親がそれを支援する。もっとも俵屋という扇に絵付けをして売る店だったというのもあって、絵が上手になればということはあっただろうが、それだけにとどめたくないという親、そして本人自身のまだ見ぬものへの好奇心が「宗達」に繋がっていったという。史実と本作がどの程度関係するのか知らないものの、信長、キリシタン、遣欧使節など興味を惹かれることが満載だ。下巻も楽しみ。
読了日:10月18日 著者:原田 マハ
霧をはらう (幻冬舎単行本)霧をはらう (幻冬舎単行本)感想
似たような事件はどこかで起きたような。本作を読みながら、ほとんどが有罪になる刑事事件。犯罪のシナリオが描かれそれに沿って調書が作られていく恐ろしさを感じた。無罪を主張することの困難さを感じながら、読めた。伊豆原や最後に加わった栞のような弁護士であったから裁判を乗り越えれたのだろう。無罪になって欲しいと思いつつ読んだものの、意外な結末。引き続く伊豆原はどのような方針です新たな弁護を受けていくのだろう?政治家などの権力者の影で自殺などに追い込まれた人の思いを晴らす司法制度を望みたい。
読了日:10月14日 著者:雫井脩介
チーム (実業之日本社文庫)チーム (実業之日本社文庫)感想
箱根駅伝の学連選抜を中心とする物語。箱根駅伝に出場できないチームからの選抜メンバー。それぞれが自分の大学の名前で出ることができなかった悔しさを抱えながら、それでも選抜メンバーとして出ることができる。今回で卒業する者もそうでないものも。彼らの監督となるものも大変な苦労があることだろう。もちろんキャプテンとして活動する浦も、自身の今までの苦悩を背負いそして直前になってのアクシデントを伏せながらのアンカーの重圧。今まで何気なく見ていた箱根駅伝を見る楽しさを教えてくれた小説になった。
読了日:10月09日 著者:堂場 瞬一
あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)感想
6短編の中で最初の「最後の伝言」が、最高の感動。「髪結い亭主」さながらの父親が母から受け取った遺言!お母さんの胆力と夫を信じる力に感服。「無用の人」の父親が残してくれたものから、思いとは違って自分の進む道のヒントになったものをきっちりわかってくれていた。身近にいたり離れていたり、様々だが、誰かが、誰かの言葉や生き方が、自分の生き方に影響を与えている。また逆に、自分も誰かの生き方に何らかの力を与える存在になりたいものだ。もちろん迷惑や心配を与えることは最小限にして。
読了日:10月03日 著者:原田マハ
臨床の砦臨床の砦感想
新型コロナ感染症の第3波の真っ只中に、信濃で地域医療に従事する作者による小説。コロナ患者を受け入れている病院の医師・看護師などが中心。コロナ患者を受け入れる病院、病床は確保したと言いつつ理由をつけて受け入れない病院。多くの人、特に政治家にはぜひとも読んてもらいたいものだ。介護施設利用者のクラスターでの対応の大変さ、院内感染での医師たちの対応、非難されながらも必死で取り組む姿に感謝しかない。4,5波の時はどうだったのだろう。6波に向けて飲食店より病院への対応を国にやってもらいたい。
読了日:09月30日 著者:夏川 草介
声の在りか声の在りか感想
希和さんが日々の生活の中での窮屈さからしだいにその殻を破ろうとする姿が、ゆっくりではあるが、見えてくる。子どものころからの生活の影響もかなりありそうだ。親や周りの人によく見られたいがために、自分の思いや意見を抑えてしまいやすいようにも思う。自分自身を考えても、違った意見を言えないまま過ごしたことも多かった。アフタースクール鐘で働き出した希和さんが、しだいに自分の思いを強く持つようになり、学校の懇談会の中でしっかり言えたことに拍手喝采。今後が楽しみだ。
読了日:09月25日 著者:寺地 はるな
境界線境界線感想
東日本大震災で行方不明の人の名前が、悪事に利用されてしまった。笘篠誠一郎・宮城県警刑事が捜査する。死体の身元は誰なのか。名前の手がかりはあってもその名前の人物とは異なる。死亡していないのに本人の所在がわからない、名前や免許証はあるのにその本人ではない。犯罪その他で自分の身元を伏せながら社会生活をするために他人の名前を使う。それを斡旋して金を稼ぐもの。失踪期間中に宙に浮いている名前のデータがこんな悪事に利用されることもあるのだろうか。個人情報保護が悪の手で歪められる。
読了日:09月22日 著者:中山 七里
たまごの旅人たまごの旅人感想
派遣の旅行添乗員となった遥が繰り広げる5か所での物語。旅行が大好きでも添乗員の仕事をするのは大変そう。現地での案内は好きなことだからなんとかできるとしても、ツアー客の相手がなんとも大変そうだ。それをひっくるめての添乗員なんだろうが。文句ばかり言う客なんか本当にいそうだ。天候に左右されて楽しみなことが体験できないだけでも非難されそうだ。5話はコロナ禍での添乗員、それも派遣社員の処遇には多くの共感を得るのではないだろうか。それにしても遥さんのアイデアはナイス!
読了日:09月15日 著者:近藤 史恵
リボルバー (幻冬舎単行本)リボルバー (幻冬舎単行本)感想
すごく面白かった。ゴッホとゴーギャン。名前や作品はいくつか知っているものの、2人にこんな関係があったなんて。新しい絵を求めて刺激し合う2人の画家、オークション会社に勤めながら彼らを論文にしようとする冴。リボルバーという銃がこの物語の中心とは驚きだった。絵の好きな人、ミステリーの好きな人には最後まで惹きつけられる作品だろう。最後に冴の友達の莉子さんの登場で、感動は一気に高まる。とかく自分さえよければと思う人は多いだろうに、莉子さんは違った。冴の人柄ゆえも大きいのだろうね。
読了日:09月11日 著者:原田マハ
エレジーは流れないエレジーは流れない感想
久々のしをんさん。怜の母親が寿絵さんと伊都子さんの2人いるって、どんな関係?それでも怜は決まったようにそれぞれの家で過ごしている。「迷惑のかけあいが、誰かを生かし、幸せにすることだってある」という一文があったが、この餅湯温泉駅前商店街の人々の温かさにほっとさせられる物語だった。怜の父親はやっぱりの男だったが、伊都子さん寿絵さんは経済的には大きな差があるとはいえ、どちらも相手を思いやりながら怜を大切にしていていいね。
読了日:09月05日 著者:三浦しをん
琥珀の夏 (文春e-book)琥珀の夏 (文春e-book)感想
「ミライの学校」で出会ったノリコとミカ。友達を作りにくいノリコにとっては、夏の1週間てのミカの存在は大きかった。「問答」を通して子どもたちの成長を促すというのは暗記主体の日本でも取り入れたらと思う。弁護士・法子に美夏の弁護依頼がくる。数十年たって発覚した事件から、弁護のために当時のことが明らかにされていきどんどん惹きつけられる。法子の弁護を決断する葛藤も、カルト集団だと認知されたとなるとそうなってしまうのかと思う。ミカちゃんのためによくやったノリコ。ミカも長く辛かったね。
読了日:08月31日 著者:辻村 深月
大事なことは植物が教えてくれる大事なことは植物が教えてくれる感想
植物に関わって偉人たちの名言がいろいろとあるものだ。竹の成長が早いのも節があるから、強くもあり成長も早いという。高橋尚子さんの座右の銘「何も咲かない寒い冬は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」もいいね。『タゴール詩集』に「花はその花弁のすべてを失って果実を見いだす」。美しい花に目を留めやすいが、花にとってはそれからあとの果実を作るところが大切な時間になる。さて私の節はどこにあるのだろう、華やかな生活のあと何が残せるのだろう。
読了日:08月22日 著者:稲垣栄洋
生き物の死にざま生き物の死にざま感想
蝉の「空が見えない最期」がきっかけ。死んだセミが仰向け。そのなぜ?からこの本を知った。何年も過ごした地面を見つめる最後ってすごく印象的だった。ハサミムシも母親は卵を40日以上抱え、誕生したらそのまま子どもたちに我が身を差し出すという。赤家蚊も子どものために人の血を決死の覚悟で吸いに来るという。蚊の口は6本!。2本で切り裂き2本で開き、残り2本のうち1本は痛みを感じにくし最後の1本で血を吸う。見つかれば命はない。ベニクラゲは何度も若返るなど驚きがいっぱい。
読了日:08月21日 著者:稲垣 栄洋
虹猫喫茶店 (祥伝社文庫)虹猫喫茶店 (祥伝社文庫)感想
猫カフェではなく猫の貰い手を探すための喫茶店。店主サヨリさんは最後までおぼろげな印象。獣医学部になんとか入学した玉置翔がアルバイトとして通うくらいだから、サヨリさんはよほど魅惑的だったのだろう。でもあの言葉遣いはどうなの。一人だから?トレーダーだがそこは描かれてないし。でもカケルは、あの難しそうなお婆さんの家で多くの猫の引き取り手を見つけながら、世話をし続けた。人間関係がうまく行かなかった人たちが猫を通じて身近になっていく姿がよかった。カケルの次の生活も覗きたい。
読了日:08月14日 著者:坂井希久子
雨の日は、一回休み雨の日は、一回休み感想
パワハラ・セクハラ、以前は当たり前のことのようになされていたことが時代とともに、意識の高まりとともに問題となってきた。それに順応できない世代の人にとっては身の置き所がない。「時雨雲」の獅子堂もやっと「男と女、夫と妻、心の中の上下関係を取っ払うと、とたんに視界がクリアになる」ことに気づけた。これからが楽しみだ。「涙雨」の佐渡島も娘にまで見放された感があるが、職場での元部下からのパワハラめいたしうちにしたたかな切り返しができて溜飲が下がった。養育費頑張れ!
読了日:08月08日 著者:坂井 希久子
にぎやかな落日にぎやかな落日感想
83歳のおもちさんは元気だね。少し認知もあるのだろうが、主人公としてこの本の中で、時々スルーしてしまう言葉もあるが考え、行動する。細々と記録し保存、友達ともおしゃべりしたりカラオケしたり。先に認知症がひどくなった主人を施設に入れたあとも元気いっぱい。でも糖尿病になり食事をコントロールできる「マンション」生活。家族に支えられながらも、友達に手紙を書いて近況を知らせたり、明るく過ごしている。認知症・施設というと家族の目で描かれることが新鮮だった。
読了日:08月05日 著者:朝倉 かすみ
星落ちて、なお星落ちて、なお感想
河鍋暁斎の娘とよ(暁翠)が絵の道に進みながらも、父のように奔放にもできず技量も高まらないと、苦悩しながらの様子が描かれる。明治から大正と時代も変化し大和絵、日本画の中に西洋的なものが注視されていく。狩野派の暁斎をどう乗り越えていけるのか、時代の流れと画風との鬩ぎ合いの苦しさ。この苦しさを娘にも味わわせるのか。暁斎の最後を仕切った清兵衛に気付かされた。人は喜び、楽しんていいのだ。生きる苦しみ哀しみと、矛盾しない。人の世が苦悩に満ちていればこそ、たった一瞬の輝きは生涯を照らす灯となる。
読了日:08月01日 著者:澤田 瞳子
テスカトリポカ (角川書店単行本)テスカトリポカ (角川書店単行本)感想
直木賞受賞本の最初から麻薬絡らみの抗争、臓器売買の酷い世界に足が竦む。それにしても抗争の中で神に捧げる仕打ちには目を背けたくなる。テスカトリポカ(黒い鏡が煙る)神に護られたバルミロは、東を収めるためにアジア、ジャカルタそして日本にやってきた。麻薬よりも臓器売買に手を出していく。日本で過ごしていたコシモとどう関わっていくのか、気になりながら進む。腎臓は2つあるでも心臓は1つ。無戸籍児童もいる。自分の知らないところでこの小説のようなことが起きていそうで、ゾッとする。最後のコシモに少し救われた。
読了日:07月28日 著者:佐藤 究
さまよう刃 (角川文庫)さまよう刃 (角川文庫)感想
少年たちによる少女狩り、レイプから自殺や殺人まで引き起こしてしまう。被害にあった女性や遺族の心情が堪える。少年だから法的にも一般より軽く扱われることを悪用して犯罪を繰り返すことが憎い。娘が殺された長峰の思いも強く伝わってくる。犯罪者への更生、少年犯罪の刑をどう考えたらいいのだろう。復讐を狙う長峰に情報を伝えるのは誰か。復讐は達成できるのか。最後まで惹きつけられる。結末は!
読了日:07月18日 著者:東野 圭吾
悪徳の輪舞曲悪徳の輪舞曲感想
元「死体配達人」の御子柴礼司弁護士が、姉から母の弁護を依頼される。親子としてではなく被告人と弁護人として活動する御子柴の心中はどうだったのだろうか。自殺か殺人か?検察側の証拠は覆しようもないもののように思えたが。御子柴の過去の事件以後の家族の置かれた状況についても御子柴自身は冷徹なほど他人事のように振る舞う。御子柴は今の弁護に関係あるものだけを探そうとする。不利な裁判を覆す手腕の凄さ、そして被告人の母から最終弁論後に耳打ちされた衝撃的な一言。1日で読み終われた。
読了日:07月12日 著者:中山 七里
ヒポクラテスの悔恨 法医学ミステリー「ヒポクラテス」ヒポクラテスの悔恨 法医学ミステリー「ヒポクラテス」感想
法医学教室の栂野真琴と埼玉県警捜査一課の古手川のコンビがいいね。それぞれの上司がまた唯我独尊の光崎教授と渡瀬班長。上司の影響を受けた真琴と古手川は自然死と判断された中から、光崎教授への挑戦状的な「自然死としか見ないような殺人」予告への対応だ。一見、自然死のように見えても解剖してみると、外部からの手が加わっているとわかる。光崎の腕・判断がすごい。死体から真実の声を聞こうとする法医学教室の人たちと、そこへ繋げようとする古手川の尽力、それを支持する上司の強い正義感が良かった。
読了日:07月11日 著者:中山七里
ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったらビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら感想
いやー面白かった。新型コロナウイルス感染対策をなし得ない時、AIとホログラムで登場した家康、龍馬、義満、政子など過去の英傑たちが内閣を組織する。厳しい規制をかけ、不満を持つ人々には北条政子が熱意を持って説く、経済対策、外交対策、歴史上でその分野で活躍した人材が大臣として指揮を執る。エンターテイメント劇場だ。映画化されるのも面白そう。龍馬とテレビ局の理沙との関係もナイス。家康の大演説「自由は不自由とともに、未来に向けて」は、沁みる。「一部の人の自由」ではなくすべての人の自由と不自由」だ。
読了日:07月08日 著者:眞邊 明人
ミシンの見る夢ミシンの見る夢感想
貧しいながらも誠実に「お針子」として生活する主人公「私」が日常を綴っていく。祖母の生き様からひたむきに針子として一人前になっていく。貧富の差も大きく、仕立て直しでの生活はできたが貧しいまま。豊かな地位のある家庭でも外見は見えを張り「パリから届いた衣装」と街を歩きながら、実際は仕立て直しをさせる吝嗇家も描かれていた。私を支えてくれる街の人、そんな姿に想いを寄せてくれる男性。資産を独り占めしようとして圧力をかけてくる男性の親族。手縫い、手回しミシンから次第に私の世界が、危機を乗り越え、見事に開けていった。
読了日:07月05日 著者:ビアンカ・ピッツォルノ
よくばりなカササギ (児童書)よくばりなカササギ (児童書)感想
ねずみくんから貰った1つのビー玉。カササギはそれから次々にいろんなものを集めて巣に運ぶ。カササギは朝鮮半島や北九州だと思っていたけど、北アメリカにもいるんですね。私もなにか一つ手に入ると、さらに次へ次へと手に入れたくなりがち。カササギの気持ちもよくわかる。これはきれいだったから、これはあのことに使えそうだ、これは・・・と。終いにはこれってなんで持ってきたんだろう?ってことになることも。ネズミくんのように「そんなにいらないんじゃない?」とアドバイスをくれる人が近くにいて、それに従えたらいいね。
読了日:06月29日 著者:I.C. スプリングマン
メダカ (いのちのかんさつ)メダカ (いのちのかんさつ)感想
メダカを飼いながらほとんど何も知らないので、読む。著者によるメダカの生態が丁寧に描かれていて、オス・メスの違いや卵の成長経過がよくわかった。小さい子にも読みやすいようにすべての漢字にルビが降ってある。大人が読んでも十分読み応えがある内容だった。自然環境、メダカを他の場所に放すことだけでも生態に悪影響を与えるなど、考えさせられた。各ページに説明文も詳しく長いのでやむを得ないのかもしれないが、行間が狭くルビがその狭い間にあるので、読みづらさがあった。
読了日:06月28日 著者:中山 れいこ,アトリエモレリ
お誕生会クロニクルお誕生会クロニクル感想
誕生日を祝うって今まで何度あっただろう?7短編は誕生日の人間模様が家族、職場などを舞台に描かれていく。喜び、辛さ、いろいろあるものだと改めて感じた。「ドールハウス」のルーちゃんの言葉やミャオ族の「嬉しいことはできるだけ多くの人たちと分け合う」伝統を保とうとする姿に感服。「あの日から、この日から」「刻の花びら」は母子の深く刻まれた愛に涙した。「万華鏡」も憎んでいたはずの母だったのに、その母が実は・・・。表面では見えなかった真実の姿が見えた。
読了日:06月28日 著者:古内一絵
痛みの道標痛みの道標感想
おすすめ。会社の上司の指示で営業成績を上げるために不正を繰り返す達希、太平洋戦争中、ボルネオ島に志願兵として渡った祖父・勉。戦中の苦い経験から成仏できない祖父の思いを達希が叶えようとする。戦争中の日本兵と現地住民との関係、さらには日本兵の階級差による軋轢。真実を隠しながら戦勝を報じる大本営と現在の企業、政治が重なる。慰霊碑の日本兵のレリーフを見る達希に、過去の歴史は受け止めながら新しい関係を作っていくことが大切だという現地の人の声が胸にしみる。真実に生きる人、自分を誤魔化し重荷を背負う人。
読了日:06月25日 著者:古内一絵
痛みの道標痛みの道標感想
おすすめ。会社の上司の指示で営業成績を上げるために不正を繰り返す達希、太平洋戦争中、ボルネオ島に志願兵として渡った祖父・勉。戦中の苦い経験から成仏できない祖父の思いを達希が叶えようとする。戦争中の日本兵と現地住民との関係、さらには日本兵の階級差による軋轢。真実を隠しながら戦勝を報じる大本営と現在の企業、政治が重なる。慰霊碑の日本兵のレリーフを見る達希に、過去の歴史は受け止めながら新しい関係を作っていくことが大切だという現地の人の声が胸にしみる。真実に生きる人、自分を誤魔化し重荷を背負う人。
読了日:06月25日 著者:古内一絵
コウモリとしょかんへいくコウモリとしょかんへいく感想
窓が開けっ放しになっていた図書館へ入っていったコウモリたち。ごちそうの本はさすがコウモリのためのものだね。他の物語が隠されているとはいえ、いくつかしかわからなかった。図書館の楽しみを感じてくれる子が増えればいいね。
読了日:06月18日 著者:ブライアン・リーズ
非弁護人非弁護人感想
読み応えがあった。元検事でありながら非弁護人としてしか活動できなくなった宗光彬。ヤクザのお抱えでもありながら、小学生のマリクとのわずか数千円の依頼を受けて動き出す。在留外国人や組織から相手にされなくなった者たちが消えていく?宗光が我が身を張りながら調べていく。かつての同士かつ仇敵や組織を使いながら核心に向かっていくストーリーに惹きつけられないはずはない。闇の中で活動するものさえ黙っておれない悪事。目を覆いたくなる事件の真相と困難を極める証拠集め、宗光の執念が凄かった。
読了日:06月18日 著者:月村了衛
神のロジック 人間のマジック (文春文庫)神のロジック 人間のマジック (文春文庫)感想
よくわからないまま施設に集まってきた11,2歳の少年少女たち。ワークショップをしながら自分たちは名探偵の養成所にいるのではないかと感じ始める。ワークショップでそれぞれが課題に向けて議論している様子はまさにそんな感じがする。神戸からアメリカ?進んでいくにつれ、この施設に来た経緯も曖昧、施設の職員、博士も何やら不穏な動きをしているようだ。単純にどんな名探偵に育っていくかと楽しみにしていたら、終盤は大変なことになっていく。いやいやそれどころか少年少女たちは!すごい結末を迎える。
読了日:06月14日 著者:西澤 保彦
あなたへの一句あなたへの一句感想
「俳句でエール」のメルマガから誕生した本。作者の俳句はもちろん、芭蕉など俳人の句、飯舘村の「愛の俳句」などの優秀作品などで構成されている。それぞれの句の解説、季語の説明など、ためになる。それにしても俳句17文字の世界は広い。季語を含めて知らない言葉がたくさんある。まどかさんは北スペインのサンティアゴ巡礼900kmを歩いたり、韓国釜山ーソウルを歩いたりと、すごい人だ。以前に我が村に来訪されたときにもっと俳句に興味を持っていたり、この本を読んでいれば、随分違ったのだろうにと残念に思う。
読了日:06月10日 著者:黛まどか
感染症の日本史 (文春新書)感染症の日本史 (文春新書)感想
新型コロナ感染症の広がりを、歴史の感染症から読み解かれている。江戸時代、「15代の将軍のうち14人が疱瘡に」「藩主の感染をゼロを実現した岩国藩」「すでにあった給付金」「薬をただで配った大阪の商人たち」など今の政治家たちは本書をぜひ読んでもらいたいものだ。スペイン風邪が第一次世界大戦と重なっていてさらに関東大震災の4倍の死者だったと。そんな酷さだったということは習っていなかったような気がするが。今のコロナの対応も記録に留められることを願う。政府・厚労省は記録を残し破棄しないように。
読了日:06月04日 著者:磯田 道史
白鳥とコウモリ白鳥とコウモリ感想
殺人事件の被害者家族と加害者およびその家族。被害者参加制度。500ページを超える大作だったが、どんどん惹きつけられた。5分の2程のところで、あれ?もう解決した!と思ったが、そこからの展開がすごい。さすがに多くの読者を引き付ける作家だ。罪と罰、どう背負っていくのか、どう晴らしていくのか。人間の光と影、白鳥のように見えてたものが実はカラスだったり、相手によってコウモリのように言い繕ったり。織恵さんや美令さんや和真さんなど若い人たちの行動考え方に感動させられた。もちろん達郎にも。
読了日:06月02日 著者:東野 圭吾
梟のシエスタ梟のシエスタ感想
主人公は吉川?「梟のシエスタ」なら梟の袋井?大学の教授たちを巡る物語。吉川が困った状況になってくると、袋井が登場してくるというパターンだ。吉川を救っているのか困らせているのか。袋井は善人なのか悪人なのか。この大学をどうしようと袋井は考えているのか。フクロウのように昼夜逆転の袋井の真意がなかなかつかめない。「ほお」と言いながら何を考えているのか気になったまま終盤。学長選挙、学部再編の中で誰が動かしているのか。フクロウ?カラス?それとも。フクロウはシエスタ(昼寝)を取るのが狙いだったのか?
読了日:05月29日 著者:伊与原 新
MR (幻冬舎単行本)MR (幻冬舎単行本)感想
天保薬品のMR(医薬情報担当者)の紀尾中たちが、薬の開発に関わる大学の教授たちの協力を得ながらライバル企業と競う様子に驚くことも多かった。「患者ファースト」か「企業の利益優先」か。一線を画すことはできないにしても、薬害だけは避けてもらいたいものだ。新薬開発でどうデータを集めるのか、処理するのかも興味深かった。ライバル企業につく教授の動きにも目が離せない。社内も開発費用や昇進を巡る動き。社長の「患者ファースト」の精神で乗り越え成果を上げてきた紀尾中たちのエネルギーはすごい。そんな彼を待っていた結末!
読了日:05月27日 著者:久坂部羊
キネマの神様 ディレクターズ・カットキネマの神様 ディレクターズ・カット感想
ゴウさんの初監督での緊張ぶりが目に浮かぶようで、またその後が残念だった。テラシンさんとの関係がどうなるかと心配したが、ゴウさんの人柄なんだろうね。淑子さんの「あの人を幸せにしてあげる」「一緒になって後悔する方を選ぶ」と言い切るってすごいね。その後の生活を見ててもドンと構えているようで、淑子さんの強さ、ゴウを信じる力が半端ない。映画を生きていく上でのバイブルにする強さ。孫と一緒にかつての脚本を再生して見事受賞。もう、最後は嬉しくて泣けてきちゃった。この作品が作られた経緯もいいね。
読了日:05月18日 著者:原田 マハ
流星シネマ流星シネマ感想
「流星新聞」の太郎は、一体どのくらいの取材や記事を書いているのか、その苦労の様子が見えない。でも、かつて居たという鯨のことが次第に話題の中心に収まっていく。都会の「ふきだまり」のような崖下の仕事場には、自由に街の人達か気楽にふらっと立ち寄れる憩いの場でもあり情報が集まる場でもある。気分転換もできる。鯨との関係が、人々の何気ない言葉から、一つに集約されていく。吹き溜まりは情報の吹き溜まりにもなり、皆の生きがいを高めるエネルギーの集積・発信地にもなっていきそうだ。
読了日:05月14日 著者:吉田篤弘
ほたるいしマジカルランドほたるいしマジカルランド感想
改札を抜けると529歩で到着するマジカルランド。500歩でも530歩でもない。なんで?楽しくなりそうな物語のはじまりを感じてしまう。社長のほとんどの指には指輪。なぜこれほど石にこだわるかは最後になって明かされる。マジカルランドで働く人たちが以前から持っていた悩みが、この職場、社長の方針によって生かされていく。画一的な採用ではなくその人の良さを仕事の中で生かしていこうとするマジカルランドは、楽しみに来ている人たちばかりでなく、働いている人たちにも、幸せを与えている。すべて違っているからいい。
読了日:05月05日 著者:寺地 はるな
多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。 (サンクチュアリ出版)多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。 (サンクチュアリ出版)感想
この世の中楽しい事ばかりならいいのに、そんなことでは終わらない。嫌なことや悩むことも多い。悩みがあるときにこの本を読むと、なるほど、そういう考え方すれば楽になれるなと思うことが細かく示されていた。「言葉の不法投棄」「言葉の通り魔」「『憑かれた君』を追い出す」「相手に何かをするときはやりたいからやったと考える」「生きている時間の中で変えられるチャンスは過去でも未来でもなく今だけ」「辛いときだから見えるものもある」
読了日:04月29日 著者:Jam
1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)感想
集中して読むこともできなかったせいもあろうが、うまく読み込めなかった。「したことへの後悔。しなかったことへの後悔。考え出すと止まらずあとからあとから浮かんでくる。」同じ後悔だが、どちらの後悔のほうが後々まで響くのだろうか。「何もあげられない時は笑顔をあげなさい。」この言葉はいいね。「5秒の思いつきで出たセリフに五日間落ち込むなんて時間の無駄だ。」相手から浴びせられたときもこんなふうに考えると楽になれそう。これらのフレーズだけはメモを残せたが、よく読まれているようだが、私には向いていなかった。
読了日:04月27日 著者:一木 けい
あつかったら ぬげばいい (MOEのえほん)あつかったら ぬげばいい (MOEのえほん)感想
とかく何かに行き詰まったときに、なんとか突破しようとして悪戦苦闘。がましゃらになってしまいやすい。そんなときにこの本を読むと楽になる。「ヘトヘトにつかれたら はもみがかずにねればいい」「きょういちにちなにもすすめられなかったら 136おくねんのうちゅうのれきしにおもいをはせればいい」「あつかったら ぬげばいい」「さむかったら きればいい」。今の状況を打開する処世術!考え方の転換!日々の生活の中で頭が沸騰しかけたら、シンスケさんにならって方向転換することを考えてみようっと。
読了日:04月24日 著者:ヨシタケ シンスケ
うちの父が運転をやめませんうちの父が運転をやめません感想
いま高齢者の自動車事故がニュースに取り上げられることが多くなった。都会の人は交通機関が充実しているから車はなくてもよいのだろうが、過疎地はそうはいかない。軽い認知症ても、体力・脚力が落ちても車がなかなか手放せない。脚力が落ちたからちょっとそこまで車で行くということも。ブレーキは大丈夫か?本書でも父親を心配しながらUターンし、買い物難民のために移動販売することが描かれていた。主人公の猪狩雅志とその息子の息吹の決断と今後を応援したいものだ。
読了日:04月22日 著者:垣谷 美雨
心淋し川 (集英社文芸単行本)心淋し川 (集英社文芸単行本)感想
心淋し川の流れているのかどうかはっきりわからない場所にある「長屋」に住まう人々の物語。最初は短編?と思いながら読んでいたが、心町とそこを差配する茂十がさり気なく出てくる。みな淀みのような生活ながら精一杯生きている。最後の章でやっと茂十や楡爺のことが細かく描かれてくる。「人生は妥協の連続、折れるからこそ他人の痛みも察せられる」というように、心淋し川に集う人々は人を思い、どぶ川とは違う「清冽な流れ」の心を持つ人たちだ。温かな人の物語だった。
読了日:04月17日 著者:西條奈加
絶対!うまくなる オカリナ100のコツ絶対!うまくなる オカリナ100のコツ感想
オカリナを始めよう、また始めている人が感じる疑問などを含めながら、上達するための100のコツがまとめられている。楽譜など音楽の初心者にもありがたい説明も丁寧に記されている。他の教本に見られる半分以上は楽譜というスタイルとは違って、本書にはほとんど楽譜はなく、コツや取り組む姿勢についてまとめらている。
読了日:04月14日 著者:大沢 聡
超カンタン! もっと楽しむオカリナガイドブック 吹奏技法から楽譜の基礎まで図解でしっかり学べる超カンタン! もっと楽しむオカリナガイドブック 吹奏技法から楽譜の基礎まで図解でしっかり学べる感想
オカリナ吹くときの姿勢、呼吸の仕方、穴の押さえ方まで写真とともに説明してある。#♭などのつく楽譜の読み方が説明されていて初心者にはありがたい。後半は楽譜。
読了日:04月13日 著者:田島 篤
初中級者のための オカリナが上手くなる方法初中級者のための オカリナが上手くなる方法感想
オカリナの持ち方から、息の使い方などr絵とともに説明してある。後半は譜面中心だが前半にはオカリナの作り方もかんたんに示されていた。初歩的な演奏の仕方も丁寧に説明してあった。
読了日:04月13日 著者:橋本 愛子
初心者のオカリナ基礎教本 メロディをやさしく吹きながら実践で学べる入門書初心者のオカリナ基礎教本 メロディをやさしく吹きながら実践で学べる入門書感想
たくさんの曲の譜面と簡単にオカリナについての話題と奏法などの説明。編者の練習曲として「オカリナのためのエチュード」というのもあった。「アーティキュレーション」として「ポルタート奏法」「ノン・レガート奏法」「レガート奏法」「スタッカート奏法」という音楽の素養のないものには初めて出会う言葉もたくさんあった。
読了日:04月13日 著者:橋本 愛子
月とコーヒー (文芸書)月とコーヒー (文芸書)感想
寝しなに読むための24短編、とあとがきにある通り、1話十数頁で次々に読むことができた。いい話だなと「青いインク」を読み終わっていたが、その後、100ページほど進んだところに続きだ出てきて喜んだ。さらに最後の「ヒイラギの青空」と。たまたま出会えた作家の本書、素敵な話で続きか読みたいものばかりだった。「三人の年老いた泥棒」たちにもっと活躍して夜空に星を放ち続けてもらいたい。「冬の少年」の「ページをひらくことは世界をひらくこと」とあるが、この本にはたくさんの夢、恋、不思議と出会わせてくれた。
読了日:04月13日 著者:吉田 篤弘
老人初心者の覚悟 (単行本)老人初心者の覚悟 (単行本)感想
テレビ「サワコの朝」も残念ながらなくなってしまったが、このエッセー集でサワコさんの日頃の思いが伝わってきて、面白く読み終わった。作家の子どもとしての苦労、30分のテレビ番組で5時間の拘束など自らの生活を描きながらのエッセーで親しみやすかった。泣き虫のサワコさんなのか、怒り虫のサワコさんなのか、いろんなサワコさんに出会えた。
読了日:04月11日 著者:阿川 佐和子
いつか、あなたもいつか、あなたも感想
在宅医療の6短編。作者の体験からの作品。医者、看護師の患者への対応は精神的・体力的に大変だと改めて感じた。テーマは、まさに自分のことでもある。私もいつかは、場所の違いはあろうがいずれは死を迎える。その時の精神状態はどうなのだろう。病気もさまざま、認知症になってるかもしれない。できることなら痛みもなく、周りの人に感謝しながら旅立ちたいものだが、そううまくことが運ばないのがこの世の常かも。最後は安楽死についても投げかけがされていた。本人や周りの人のこと考えると認められてもよいのでは。
読了日:04月06日 著者:久坂部 羊
月まで三キロ月まで三キロ感想
6短編、いずれも心のどこかに不安なものを抱えながら、心がほっとできる作品ばかり。この作者に出会ってまだ2作品目ですが、他の作品にも触れてみたい。表題作のタイトルはどういう流れになるのか楽しみだった。終末はしんみりとしながらも力強さをもらえた。「エイリアンの食堂」もどんなものが登場するのか、わくわく。そのエイリアを見つけるのがこれまたかわいい子。もっともっとこのエイリアンとともに過ごせたかった。それぞれの登場人物の生き様に魅了された。「山を刻む」では主人公を案じたが、このような歩み方をするなんて素晴らしい。
読了日:04月01日 著者:伊与原新
珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界 (たくさんのふしぎ傑作集)珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界 (たくさんのふしぎ傑作集)感想
伊与原新著「八月の銀の雪」の中の「玻璃」のテーマから珪藻について初めて知った。珪藻土というのはよく聞いていたが、そこにこんなにきれいな世界があるということで、この本を手にした。1mmの十分の一とか百分の一単位のガラス状の珪藻を集めてきれいな柄に作り上げるなんて驚き。環境を整えることr顕微鏡を見ながらの作業ということに感銘するばかり。光の当たり方によって全く色が変わったりその形状、1つ1つのさまざまな模様にも驚いた。ミクロの世界!
読了日:03月22日 著者:奥 修
不祥事 (講談社文庫)不祥事 (講談社文庫)感想
久しぶりに花咲舞さんの活躍を楽しませてもらった。単行本は17年前発行、今回は14年に実業之日本社刊行されたもので、作者のあとがきにも頷いた。現実とは違ってもいい。ネットの反応をチェックする作者の姿勢もいいですね。舞さんの活躍は清々しい。舞さんが歳を重ねていったらどうなるのでしょうか。家庭を持ち、子どもを育てながら仕事で活躍する舞さんがみたいものです。「彼岸花」では舞さんが出てこないなと思ったら、ちらっと出てきて存在感を示しましたね。こんな登場の仕方もあったのか!
読了日:03月21日 著者:池井戸 潤
八月の銀の雪八月の銀の雪感想
本屋大賞ノミネート作品。表題作含む5短編。「八月の雪」それも「銀」?理学の専門を生かした内容も。派手ではないが、しっとりと心に迫る作品ばかり。私が今まで知らなかった部分に触れることができた。表題作は、「大丈夫?」とヒヤヒヤしながら読んでいたが、グエンさんとの関わりで救われた。にしても、地球の内部はどうなっているのだろう。「銀の雪」見れたらいいのに。あとの作品の登場人物も素晴らしい人が次々に出て「クジラ」の絵も、「玻璃」も見たくなる。「アルノー」をよく探したものだ。心温まりました。
読了日:03月19日 著者:伊与原新
滅びの前のシャングリラ滅びの前のシャングリラ感想
本屋大賞ノミネート作。地球滅亡直前!の物語。すごい設定だ。あと1ヶ月をどう過ごすか?どう過ごすのだろう?店を襲い食料など生活物資を盗る?人を殺しても平気?一体どうなるのだろう。暴力を振るわれていても最後はあの人と?最後誰と過ごして、何をしたいか。自分と関わる人に何ができるか?誰かのために何かできるか?しようとするか?命ある限り、とはよく言うが、いざとなったときに自分はどうするのだろう?暴力的な場面も多々登場するものの、いろいろ考えさせられた。
読了日:03月13日 著者:凪良ゆう
コロナと潜水服コロナと潜水服感想
今の新型コロナウィルス感染症がどのように作品に描かれるのか楽しみに読み始める。5短編集。どこかの国でそんな潜水服を着て歩いている人の姿がテレビで流れていたので、気になる。コロナの危険性を教えてくれるような海彦くんのような存在がいれば、早く終焉するかもしれない。潜水服を着なくてもいい時期に早くなってほしい。どの短編も見えない力で動く人物・霊の登場に和ませてくれた。「パンダに乗って」みたいに旅ができたらいいね。人の持つ願いをどう実現させるか、自らの手でか、誰かの手でか?
読了日:03月07日 著者:奥田 英朗
火の鳥 1・黎明編火の鳥 1・黎明編感想
久しぶりに手塚治虫。2009年朝日新聞出版から初版、20年11刷に。作中にアトム?やおそ松くんなど他のキャラクターもちらっと出ていたり、楽しみながら作り上げているようだ。呪文の言葉もことわざを逆から読んだものだったりと、いろいろ発見かできた。古代日本史を描きながら、戦争の悲惨さやそこに巻き込まれた兵隊の苦悩、命がどれだけ大切なものか、そんな中でも「水は血よりも大切」と環境保護をも呼びかけているようだ。改めて中身の濃さを知った黎明期だった。
読了日:03月07日 著者:手塚 治虫
自転しながら公転する自転しながら公転する感想
本屋大賞ノミネート作品なので読む。えっ?と思ったタイトル。これを人に当ててみると、また面白いものなのかも。読み終わって、プロローグを読み返す。終盤からエピローグの展開もあっと言ってしまった。主人公の都の仕事、生き方、家族友人との関わり。貫一との関係にじれったさを感じつつも、友人から助言を聞いたり、同僚の声を聞く都かいい。熱海での「貫一お宮」のシーンは泣き笑い。長い本だったが、楽しめた。自分で色々悩み、落ち込み、また喜びながら自転し、誰かや何かにを中心に大きく公転しながら人生をみんな送ってるんですね。
読了日:03月04日 著者:山本文緒
羊は安らかに草を食み羊は安らかに草を食み感想
発刊後1ヶ月で読め、これほど感動を覚えた本も今までなかったのでは。満州での過酷な体験を織り込みながら、生きながらえて帰国した女性の物語。認知症になった妻への夫の思いやり。友とともに過去をめぐる旅をしながら、自らの人生を振り返る同世代の女性たち。80歳で仲良く旅ができる仲間がいて、益恵さんも幸せな人だ。いやその幸せな生活を過ごすまでの人生がどれほど大変なものだったか、涙なしには読み進められなかった。歴史の教科書ではわかり得ないことだ。このような小説が広く多くの人に読んでもらいたいものだ。
読了日:02月24日 著者:宇佐美まこと
推し、燃ゆ推し、燃ゆ感想
この本で初めて「推し」という言葉に出会った。勉強ができないとは言うものの、アイドルを推すことに精一杯生きているあかりの姿がいじらしい。好きなアイドルをグループの中で中心になるようにグッズを買いまくり投票する。こんなことができたらいよいよ熱が高まっていくだろうね。そんなアイドルが不祥事を起こして、炎上する中でも支えようとするあかりの一途さ。なのに突然の解散、引退をされると、推して来たものの喪失感は大きいね。「背骨を失う」とは!
読了日:02月20日 著者:宇佐見りん
オルタネートオルタネート感想
LINEのような高校生限定のアプリ「オルタネート」。思いを話し合ったり、マッチングに利用したり。 新見蓉の調理部員として先輩とそして次には後輩とワンポーションという高校生料理対決に臨む場面が、一番よかった。その対決の中に示されるテーマでよくイメージできるものだ。それを料理に生かすというのだから。面白そうな番組だ。出版から2ヶ月で5刷というのも、作者がNEWSというだけでなく、若者の感性や料理対決番組の様子、そこで蓉の心の動きをうまく描いているからだ。父親もそのように記憶を呼び戻されると嬉しい限りだ。
読了日:02月18日 著者:加藤シゲアキ
この本を盗む者は【電子特典付き】 (角川書店単行本)この本を盗む者は【電子特典付き】 (角川書店単行本)感想
書物の蒐集家の御倉館で起きる不思議な話。本が盗まれて以来、閉館された。本への興味がない深冬は、館を守るひるね叔母を訪ねるあたりから物語が動いていく。5話で構成され、蔵書に仕掛けられた呪い?から盗んだ者が捕まるまで、その本の世界に迷い込んでしまう。深冬は真白とともに切りをつけていく。読書は物語の中に我が身をも導いてくれる。その様子が本書でもあるようだが、その呪いは誰がどのように仕組み、なぜ狐、深冬は現実世界に戻れるのか、最後まで楽しめる。
読了日:02月14日 著者:深緑 野分
晴れ、時々くらげを呼ぶ晴れ、時々くらげを呼ぶ感想
クラゲを呼んで降らす?!何とも変わったことを思い立ったものだ。世の中の理不尽に対してテロを起こそうと。小崎のクラゲ乞いに付き合うことで、同じ図書委員の越前亨の亡父への心のわだかまりがしだいに解けていくのが楽しめた。小説のタイトルもよく出てきて、またそんな本に巡り会えたらいいなとも思った。それにしてもクラゲの世界も未知なものも多そうだ。不老不死のクラゲもいるようだ。わだかまりが最後になって一気に解かれていった。何かに打ち込む姿は人を成長させるね。亨もいい作家になってゆくのだろう。
読了日:02月09日 著者:鯨井あめ
52ヘルツのクジラたち52ヘルツのクジラたち感想
タイトルに?そういう周波数のクジラがいるという。人の可聴域は20Hz〜20kHzだそうだから、52Hzはなんとか聞こえそうだが。アンさんにキナコと呼ばれた貴瑚。親の愛情どころか辛い過去を抱えたまま、アンさんや友達に救われた。キナコも自立できかけた。自分以外の人は自分を救ってくれる存在でもあるが逆の場合も。そんな自分も人のために何かしようとすると強くなれるものだ。声掛けや共に考えてくれる人によりさらに強く。耳を澄まさないと聞こえない声を聞き取り、海の底でもがきつつ光を見ようとする貴瑚らを応援していたい。
読了日:02月04日 著者:町田そのこ
犬がいた季節犬がいた季節感想
本屋大賞ノミネート作品ということで読む。感動の涙が、何箇所も。特に最後は一段と。こんな犬を中心に和やかに過ごせる学校があればいいだろうな。生徒もそれぞれ部活動や勉強にも一生懸命にやって、それぞれの道を切り開いていく。コーシローの会なんて犬の世話をする生徒たちがいる。いいその前に「命を預かる」大切さを説きながら学校で飼うことを許す校長の度量の大きさもすごい。12年間に及ぶコーシローに関わる生徒たちの物語。「迷ったときに戻る場所」は永遠に残る。HOWEVER!
読了日:01月31日 著者:伊吹有喜
きのうのオレンジ (集英社文芸単行本)きのうのオレンジ (集英社文芸単行本)感想
笹本遼賀、テレビのチャンネルの5のボタンのようだと、表現されていた。特別の働きがあるわけではないが、小さな突起があることで周りを活かせる。運動も勉強も目立つことない彼だが、迷ったときに頼りになる存在。人のために思いやりを持っていろいろ尽くせる人。いいね。感動作品だった。交友、仕事、病気そして家族。遼賀が周りに恵まれたのも彼の人柄、相手を認め大切にすることで、その人もまた力を発揮できるのだろう。恭平、バイトの高那、泉、皆遼賀にいつまでも生かされる、いや遼賀を生かせて行くだろう。
読了日:01月27日 著者:藤岡陽子
我々は、みな孤独である我々は、みな孤独である感想
探偵への依頼も依頼なら、それを調べようとする探偵も探偵だ。輪廻転生、人は生まれ変わるとよく言うか。変わった小説。江戸時代の自分が何をやってたか?そんなことが自分の中で描き出されていけば、気が気ではない。茶畑探偵もよく探っていったものだ。彼をチャバと呼ぶやくざの丹野も、酷いことをやらかすものだ。最後にその丹野の正体は・・・。彼をチャバは・・・!そんなことすると茶畑の未来は・・?自分はどこから来てどこへ行くのだろう?
読了日:01月24日 著者:貴志祐介
英国王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ英国王立園芸協会とたのしむ 植物のふしぎ感想
植物に関連して130の質問と答え、そして挿画がまたきれいな本だった。植物が生きるために進化をしながら、根を伸ばし、繁殖のために虫を呼び込み、来てもらっては困るものに対しては棘やコーティングで我が身を守ろうとする。この本も青山美智子「お探し物は図書室まで」の中に出てきていたので、出会うことができた。水の少ない砂漠での植物の生き方! 夜に光合成を行う?体の中に取り入れてから?植物それぞれが自分の置かれた環境に適した生きる方法を身につけている。
読了日:01月19日 著者:ガイ・バーター
月のとびら月のとびら感想
「お探し物は図書室まで」で、その紹介を受けて生き方が変わっていく人が描かれていたのがきっかけ。占いや伝承など世界の中で、宗教の違いで、月にまつわる話題がいっぱい。運が悪かったと気持ちを切り替えていく、という「運」という言葉の使い方。「亡くなった人」というが、「あなたの持ち物ではない」。死者だけのもの。その方と一緒に過ごしてきたことに思いを馳せよう、と。占いは気持ちを切り替えるためのもので、囚われてはいけない。未来、人の思いなど自分でどうすることもできないものにとらわれないこと、と
読了日:01月17日 著者:石井ゆかり
「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言感想
イトカワから微粒子を持ち帰った「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーからの思考法。普段、私達がしている発想ではできないことをやるにはいろんな力が必要だ。科学技術力もさることながら、本書を読んでその発想の違いを感じた。諦めるのではなく出来そうなことを考える。減 点法ではなく積み上げ点で。みんなと同じではなく違う発想を大事にする。チェック方式だけで万全と思わない。未知の分野に挑むには「変人」のような発想も大切としてコペルニクスや電気炊飯器のことも取り上げられていた。
読了日:01月15日 著者:川口淳一郎
スワンスワン感想
ショッピングセンターで、複数犯による無差別殺人事件、手作り銃、おぞましい事件だ。亡くなった人やその遺族、なんとか生き延びた人も、その後に大きな苦しみをいだき続ける。片岡いずみのように犯人に脅され、殺害順を指定しろなんて言われたら、その精神的苦痛はとても耐えられない。私はどうするだろう。生成逃げ隠れするくらいしかできない。いずみの立場に追い詰められたら?事件後の遺族からの仕打ち、社会的制裁?犯人でもないのに非難されるのか?私には厳しすぎついていけない内容。
読了日:01月14日 著者:呉 勝浩
わたしが消えるわたしが消える感想
私はどうやって消えていく?。軽度認知障碍と認定された元刑事・藤巻が、しだいに自分のことをわからなくなっていくのかな?が最初。娘の仕事先の施設で介護して行き始めた「門前さん」の出現から話が興味深くなってきた。巻末の乱歩賞審査員の厳しい講評とはいえ私には、面白い展開だった。認知が進行する前にできることをやってみようと、刑事の感を働かせながら「門前さん」を探る姿は素晴らしい。一方で地位をあげようと他人を利用する人間もいる。よく知らない人でも一緒にいて互いに生きる支えになる人もいる。
読了日:01月08日 著者:佐野広実
読書メーター

12月読書記録~7冊/1760頁

10 1月

12月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1760
ナイス数:282

ヴィクトリアン・ホテルヴィクトリアン・ホテル感想
超高級ホテルに集う人々の姿、人生が楽しかった。客室数が300近くもあれば、いろんな人もいるものだ。ホテルの中だけでこれほど楽しい物語が描けるなんて。でも、私はいつ頃から迷い込んでいたんだろう。女優に惹かれたから?新人作家の活躍が気になったから?スリの行方が気になったから?それとも・・・。終末になって、本編に描かれた内容は数十年のときが折り重なっていたなんて。そしてそして、あの人は、この人と・・・。何ということだ。ホテル最後の夜に、夢でも見てたようだ。
読了日:12月29日 著者:下村 敦史
最初の質問 (講談社の創作絵本)最初の質問 (講談社の創作絵本)感想
この本の最初の質問。「今日、あなたは知らない空を見上げましたか。」毎日のように見上げている空。わずかに見える青空もあった。でもそれを夜に思い出しているだろうか。「『うつくしい』と、/あなたがためらわずに言えるものは何ですか。/好きな花を七つ、あげられますか。」はて、なんと答えよう?この絵本にはこのような問いかけが次々に出てくる。ページをめくって、質問に出会って答えるのに時間がかかる。読むたびに手が止まり、読むたびに答えも変わっていきそうだ。それでよいのだろうが、何気なく過ごしている自分に驚いてしまう。
読了日:12月28日 著者:長田 弘,いせ ひでこ
赤と青とエスキース赤と青とエスキース感想
いいね。こいう物語は好きだ。エスキースって初めて知った。「下絵」。オーストラリで描かれた「エスキース」がこの物語の「エスキース」。4つの章のタイトル?って思ってたけど、なるほどこうなるんだ。バラバラに思えた各章も、ものだけにとどまらず、全てがつながっていた。下絵からさらに完成されたものに作り上げられていくのが普通なのだろう。私達もいくつもの段階で自分の人生のエスキースを描いてきて、次第に右へ左へ前や時には後ろに揺れながら今を描いている。さてこれからどんなふうに仕上げようか。
読了日:12月21日 著者:青山 美智子
ミカエルの鼓動 (文春e-book)ミカエルの鼓動 (文春e-book)感想
AIとかロボットとか、進歩は目覚ましい。外科手術用ロボットのミカエルとその扱いの第一人者・西條の物語。最小限の切開でロボットを動かし、拡大して見ながら手術が行えれば、多くの患者が救われそうだ。そんな西條の前にドイツから真木が入ったことで、物語は一気に不安に包まれ始める。ロボットを使うのか、外科医の手だけに頼るのか。医療の発展と病院の発展、患者の命をどう救うのか。医師のプライドと救命のための最善の方法は?生きるとは?向日葵の種は偉大だった。
読了日:12月18日 著者:柚月 裕子
母親からの小包はなぜこんなにダサいのか母親からの小包はなぜこんなにダサいのか感想
中に出てくる母親からの小包はたしかにダサいものだった。でもこの6編の話はみんな素晴らしく感動するものだった。我が家でもよく子どもたちに小包をするが、これに近いようなところもある。「最後の小包」なんかは弓香さんとともに涙を流すしかなかった。送られてくるものは、大したものではないけれど、そのものへの思い出やお母さんの気持ちまでが、小さな箱に一緒に詰められている。タイトルを見たときは「えぇーっ!」て思ったけど、読んでよかった。
読了日:12月14日 著者:原田ひ香
オーラの発表会オーラの発表会感想
海松子のちょっと変わった生き方。人の特徴から密かにニックネームをつけて、自分の中だけで楽しんでいるふうでもある。友達はいないというが、「ものまね師」萌音がいつもそばにいてくれ、海松子の相談に乗ってくれたりアドバイスをしてくれたり、頼りになる存在だ。メニューの分析力とか、臭覚の敏感さを生かす仕事が向いてるのではないかと思う。教員は厳しい。一人凧揚げが好きなんて、面白いね。友達と一緒でなくても楽しめるものがあるのは強い。そんな海松子に想いを寄せてくれる人もいるのだから、嬉しいね。
読了日:12月12日 著者:綿矢 りさ
川のほとりで羽化するぼくら川のほとりで羽化するぼくら感想
川にかかる一つの橋を巡る4短編。「わたれない」は子育てを始めた主夫。今の働き方改革か。わからないことばかりの子育てにアドバイスをもらえるのに、ひょんな事から橋が渡れなくなる。「ながれゆく」の天の川にかかる橋でこれほどの物語が作り出せるなんてすごい。「ゆれながら」未来の人間社会! 性の快楽と子孫繁栄。「ひかるほし」高齢者問題。家や土地を守ると言っても認知症になってしまえばどうにもならなくなる。各短編から今の自分の立場や意識を変える勇気を持てば、生き方も変わっていくのだと感じた。
読了日:12月04日 著者:彩瀬 まる
読書メーター

読書メーターの献本に、当選しました

25 12月

丸山正樹さんの「ワンダフル・ライフ」が、クリスマスの日に届けられた!おまけにサイン入り。
「読書メーターOF THE YEAR 2021」の第1位の本。

今まで何度も応募しながらこんなことなかったので、当選する人ってあるのかな?くらいに思っていたので、「当選しました」とのメッセージが届いてからも、半信半疑。
届いてみると、実感。

15日に当選メッセージが届いてから、本が届くまで、本人・住所の確認などの作業をはさんで、到着が本日25日だから、10日かかったことになります。

11月の読書記録~7冊・1759頁

19 12月

11月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1759
ナイス数:387

【第165回芥川賞受賞作】彼岸花が咲く島 (文春e-book)【第165回芥川賞受賞作】彼岸花が咲く島 (文春e-book)感想
游娜とどこからかやってきた宇美。2人の女の子は島を治める大ノロになろうと決意。その島は女性しかノロになれない。現在の日本の政治が男性中心で動いているのと対照的。男女で使う言葉も規定され、「うつくしいひのもとことば」を取り戻そうとしている。沖縄あたりの島のように描かれ、彼岸花が毒草でもあるが薬草として使えることで、他国から物を買っている。男友達の拓慈に女語やノロしか知ることのできない歴史を教えるのか。逆の今の日本で女性に政治の地位を与える仕組みを作るのか、宇美たちと考えてほしいと思いつつ読了。
読了日:11月30日 著者:李 琴峰
英語が話せる人はやっている 魔法のイングリッシュルーティン英語が話せる人はやっている 魔法のイングリッシュルーティン感想
60の手習いではないが、興味はありながら、徹底的にはできず、アメリカの音楽・映画などが少しでも聞き取れるといいなと思う程度。だから話すという所まで進めないのだろうが、毎日のルーティンとの内容、twitter、Instagramなどで好きな人をフォローしてその声を拾ってみるなどのアイデアも載っていた。やってみると楽しそうだ。’Nothing is impossible, the word itself says,’I’m possible!’-Audrey Hepburn 私にも「可能」かもしれない。
読了日:11月20日 著者:Miracle Vell Magic
本が紡いだ五つの奇跡本が紡いだ五つの奇跡感想
ほんの数ページ読んだだけで虜にされてしまった。作品中に涼元マサミ作の「さよならドグマ」と重なってしまう。奈緒さんの名前の由来に感動。「奈」にそんな意味があったなんて。編集者としてやり遂げたことで、多くの人に未来への幸せの糸口を与えたね。それぞれに生活の行き詰まりを多少なりとも感じていたところにこの本が出来上がった意義は大きい。書店員の心美さんの第4章に一番感動させられた。最後の読者にこのような展開があるとは。本作の人物同様、私も感動の涙を拭きながらの読了でした。
読了日:11月18日 著者:森沢明夫
巨鳥の影 (文芸書)巨鳥の影 (文芸書)感想
表題作を含めた8短編。巨鳥の声とはすごいね。調べてみるとユネスコの無形文化財として継承が行われているとか、学びたいものだ。「水無月の蟻」はとりつかれたものの最後といえばそれまでかもしれないが、悲しく哀れ。「鏡面の魚」って、試してみたくなる。もちろん魚を泳がせる方だけど。それにしてもうまく裏切られたものだ。そのおかげと言っては何だが、魚を泳がせれたのだから、ま、いいか。「再生の日」どん底に落ちたことから、新たに再生を誓えた。辛い回り道だ。
読了日:11月16日 著者:長岡弘樹
7.5グラムの奇跡7.5グラムの奇跡感想
眼科の機能訓練士として働き始めた野宮。目って、24mm、7.5グラムほどの小さなものなのにその影響はとてつもなく大きいと再認識した。機能訓練士という役割があることも初めてだった。検査で使用される機器もどんどん高性能になっているようだが、ノミーのような訓練士によって患者の状況をより正しく検査結果な反映され凄い。緑内障などで視力を失うことは避けたいものだが、その病気と付き合いながら生きがいを見つける人、精神的なことだとノミーが気づき生きる力を得た患者もあった。病気の中でも生きがいがいかに大切か感じた。
読了日:11月10日 著者:砥上 裕將
ガラスの海を渡る舟ガラスの海を渡る舟感想
道と羽衣子の兄妹がガラス工房を受け継いでいく物語。道は発達障害なのか人の気持ちを察することができない。妹もそんな兄に立腹することが度々だ。道の「人の気持ちなんかわかるわけない」とか「具体的に言ってもらわないとわからない」など確かにそうだと思う。学校からも親からも「みんなと同じように」が日本の常識みたいになっているが、「みんな違う」のだから同じになろうとするとどこかに無理が生じる。ガラス細工に打ち込む道に妹も次第に協力できるようになりよかった。またいい本に出会えた。
読了日:11月04日 著者:寺地 はるな
雨夜の星たち雨夜の星たち感想
三葉雨音さんは他人への感情移入ができないという。小さい時から「変わった子」として母や周りから見られた。勤めていた会社を辞めたのち、霧島から「しごと」を頼まれる。世の中の人はみんな変わっている。変わっているのに他と合わせる人、合わせれない人。三葉は霧島と出会えてよかった。三葉の良さを認めてくれた。それが仕事に生かせた。三葉の姉の言葉もわかる。人は「あの人変わってる」と言う一方で、密かに「自分もあんなふうにできたらいいのに」と思うことがあるものだ。認め会える社会を作りたいものだ。
読了日:11月02日 著者:寺地はるな
読書メーター

10月分の読書記録~10冊/3278頁

23 11月

10月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3278
ナイス数:309

あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)感想
6短編の中で最初の「最後の伝言」が、最高の感動。「髪結い亭主」さながらの父親が母から受け取った遺言!お母さんの胆力と夫を信じる力に感服。「無用の人」の父親が残してくれたものから、思いとは違って自分の進む道のヒントになったものをきっちりわかってくれていた。身近にいたり離れていたり、様々だが、誰かが、誰かの言葉や生き方が、自分の生き方に影響を与えている。また逆に、自分も誰かの生き方に何らかの力を与える存在になりたいものだ。もちろん迷惑や心配を与えることは最小限にして。
読了日:10月03日 著者:原田マハ
チーム (実業之日本社文庫)チーム (実業之日本社文庫)感想
箱根駅伝の学連選抜を中心とする物語。箱根駅伝に出場できないチームからの選抜メンバー。それぞれが自分の大学の名前で出ることができなかった悔しさを抱えながら、それでも選抜メンバーとして出ることができる。今回で卒業する者もそうでないものも。彼らの監督となるものも大変な苦労があることだろう。もちろんキャプテンとして活動する浦も、自身の今までの苦悩を背負いそして直前になってのアクシデントを伏せながらのアンカーの重圧。今まで何気なく見ていた箱根駅伝を見る楽しさを教えてくれた小説になった。
読了日:10月09日 著者:堂場 瞬一
霧をはらう (幻冬舎単行本)霧をはらう (幻冬舎単行本)感想
似たような事件はどこかで起きたような。本作を読みながら、ほとんどが有罪になる刑事事件。犯罪のシナリオが描かれそれに沿って調書が作られていく恐ろしさを感じた。無罪を主張することの困難さを感じながら、読めた。伊豆原や最後に加わった栞のような弁護士であったから裁判を乗り越えれたのだろう。無罪になって欲しいと思いつつ読んだものの、意外な結末。引き続く伊豆原はどのような方針です新たな弁護を受けていくのだろう?政治家などの権力者の影で自殺などに追い込まれた人の思いを晴らす司法制度を望みたい。
読了日:10月14日 著者:雫井脩介
風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)感想
博物館での説明から始まったが、生没年不詳の俵屋宗達が子ども時代から描かれ始めて、俄然面白くなってきた。好きなことに没頭できること、親がそれを支援する。もっとも俵屋という扇に絵付けをして売る店だったというのもあって、絵が上手になればということはあっただろうが、それだけにとどめたくないという親、そして本人自身のまだ見ぬものへの好奇心が「宗達」に繋がっていったという。史実と本作がどの程度関係するのか知らないものの、信長、キリシタン、遣欧使節など興味を惹かれることが満載だ。下巻も楽しみ。
読了日:10月18日 著者:原田 マハ
風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)感想
興味深かった。エピローグにある通り、史実にはないが、それでよいではないかと、マハさん。宗達と同世代の原マルティノ、ミケランジェロ・メリージ・デル・カラヴァッジョがイタリアで遭遇し、互いに絵を描くことに情熱を燃やす。遣欧使節と俵屋宗達をリンクさせ、マカオで見つかったという古文書・絵を結びつける。宗達やマルティノらの好奇心や情熱が強く伝わってきた。情報を得るのに時間と命をかけていた当時の人の熱意は、今の私達にあるのだろうか。柳広司の描く「風神雷神」もぜひ読み比べたい。
読了日:10月19日 著者:原田 マハ
宗棍(琉球空手シリーズ) (集英社文芸単行本)宗棍(琉球空手シリーズ) (集英社文芸単行本)感想
琉球王国で武術を極めていく松村宗棍の物語。空手のような術と読んだ。清国の武術の影響を受けながら、宗棍は薩摩の剣の技も取り込もうとする。子供時代に喧嘩に強かった彼が、真の強さを極めていこうとする姿に引き込まれ一気に読めた。武術の指南を受けるため役人の科に合格するという勉学に励む姿。それに美人のチルーに勝ち妻にできるという幸せな姿。どんどん強くなっていく宗棍に自惚れを戒めてくれた者の存在は大きい。廃藩置県後の日本の術でないという役人に対しての宗棍がかっこよかった。
読了日:10月20日 著者:今野敏
風神雷神 風の章風神雷神 風の章感想
原田マハ「風神雷神」に続いて読む。作者よりこんなに異なる物語を楽しめるとは。本書では宗達は「伊年」のまま。出雲阿国、本阿弥光悦らの登場とともに、平家納経修復、光悦とのコラボ作品の鶴や鹿を描いた10m前後の絵巻の制作に培ったノウハウを遺憾なく発揮する伊年の姿が興味深く描かれている。書と紙と絵の作品というだけでなくそれらを作り上げるための技術が高まっていく様子もすごい。紙屋の宗二の能力!お互いの能力を認め引き出し、高め合う姿が美しい。にしても政治で文化までも歪めようとする家康め。
読了日:10月22日 著者:柳 広司
風神雷神 雷の章風神雷神 雷の章感想
「宗達」は義父の命名と。公家の烏丸光広の誘いで公家の各家に秘蔵される作品により視野を広め、養源院「白象」、相国寺「蔦の細道図」、醍醐寺「源氏物語」、「舞楽図」など活動の幅が広がる様子に惹きつけられた。風を避けるための屏風、雷から身を隠すための屏風。そんな屏風に描かれた宗達の印もない「風神雷神図」を醍醐寺で見つめる宗達の妻美津、本阿弥光悦の娘冴、出雲阿国ら3人がそれぞれ語る「鬼」の姿に涙を誘われた。マハさんの同名小説もエンタメとしては面白かったが、本書は宗達の姿がよく見えてよかった。
読了日:10月23日 著者:柳 広司
蘭方医・宇津木新吾(9)-再燃 (双葉文庫)蘭方医・宇津木新吾(9)-再燃 (双葉文庫)感想
文政13年(1830年)松江藩多岐川家の江戸上屋敷が主な舞台。藩主嘉明という名前が出てくる。こういう時代物に慣れていないのでこのような表現に慣れない。松江藩の藩主は松平家では?松江藩主に嘉明という人物名はないように思う?架空なら松江藩と言わなくても良いのでは?どなたか教えて下さい。松江藩とあらすじにあったので手にしたものからすると、残念。宇津木新吾が事件の真相を明らかにしようと、医者としての活動以上に活躍するのは面白く、武士相手にも強い!
読了日:10月28日 著者:小杉 健治
サキの忘れ物サキの忘れ物感想
表題作から始まる9短編。どの話も静かに進行しながらなかなか掴み所がない感じ。「サキの忘れ物」は「サキ」に出会えたことで千春の人生が大きく進展する様子がよかった。その後の千春の様子を描いてもらいたい。「喫茶店の周波数」、確かに一人で喫茶店などに行くと周りの会話をついつい楽しんてしまうようなことあるなと思いながら読む。「王国」「河川敷のガゼル」「隣のビル」など生活の中で生きづらさを抱えながら何かに拠り所を見つけようとしている。そうやって自分の世界を持つことも大事だよね。
読了日:10月31日 著者:津村 記久子
読書メーター

8月の読書記録~7冊1509頁(読書メーターより)

17 9月

8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1509
ナイス数:201

琥珀の夏 (文春e-book)琥珀の夏 (文春e-book)感想
「ミライの学校」で出会ったノリコとミカ。友達を作りにくいノリコにとっては、夏の1週間てのミカの存在は大きかった。「問答」を通して子どもたちの成長を促すというのは暗記主体の日本でも取り入れたらと思う。弁護士・法子に美夏の弁護依頼がくる。数十年たって発覚した事件から、弁護のために当時のことが明らかにされていきどんどん惹きつけられる。法子の弁護を決断する葛藤も、カルト集団だと認知されたとなるとそうなってしまうのかと思う。ミカちゃんのためによくやったノリコ。ミカも長く辛かったね。
読了日:08月31日 著者:辻村 深月
大事なことは植物が教えてくれる大事なことは植物が教えてくれる感想
植物に関わって偉人たちの名言がいろいろとあるものだ。竹の成長が早いのも節があるから、強くもあり成長も早いという。高橋尚子さんの座右の銘「何も咲かない寒い冬は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」もいいね。『タゴール詩集』に「花はその花弁のすべてを失って果実を見いだす」。美しい花に目を留めやすいが、花にとってはそれからあとの果実を作るところが大切な時間になる。さて私の節はどこにあるのだろう、華やかな生活のあと何が残せるのだろう。
読了日:08月22日 著者:稲垣栄洋
生き物の死にざま生き物の死にざま感想
蝉の「空が見えない最期」がきっかけ。死んだセミが仰向け。そのなぜ?からこの本を知った。何年も過ごした地面を見つめる最後ってすごく印象的だった。ハサミムシも母親は卵を40日以上抱え、誕生したらそのまま子どもたちに我が身を差し出すという。赤家蚊も子どものために人の血を決死の覚悟で吸いに来るという。蚊の口は6本!。2本で切り裂き2本で開き、残り2本のうち1本は痛みを感じにくし最後の1本で血を吸う。見つかれば命はない。ベニクラゲは何度も若返るなど驚きがいっぱい。
読了日:08月21日 著者:稲垣 栄洋
虹猫喫茶店 (祥伝社文庫)虹猫喫茶店 (祥伝社文庫)感想
猫カフェではなく猫の貰い手を探すための喫茶店。店主サヨリさんは最後までおぼろげな印象。獣医学部になんとか入学した玉置翔がアルバイトとして通うくらいだから、サヨリさんはよほど魅惑的だったのだろう。でもあの言葉遣いはどうなの。一人だから?トレーダーだがそこは描かれてないし。でもカケルは、あの難しそうなお婆さんの家で多くの猫の引き取り手を見つけながら、世話をし続けた。人間関係がうまく行かなかった人たちが猫を通じて身近になっていく姿がよかった。カケルの次の生活も覗きたい。
読了日:08月14日 著者:坂井希久子
雨の日は、一回休み雨の日は、一回休み感想
パワハラ・セクハラ、以前は当たり前のことのようになされていたことが時代とともに、意識の高まりとともに問題となってきた。それに順応できない世代の人にとっては身の置き所がない。「時雨雲」の獅子堂もやっと「男と女、夫と妻、心の中の上下関係を取っ払うと、とたんに視界がクリアになる」ことに気づけた。これからが楽しみだ。「涙雨」の佐渡島も娘にまで見放された感があるが、職場での元部下からのパワハラめいたしうちにしたたかな切り返しができて溜飲が下がった。養育費頑張れ!
読了日:08月08日 著者:坂井 希久子
にぎやかな落日にぎやかな落日感想
83歳のおもちさんは元気だね。少し認知もあるのだろうが、主人公としてこの本の中で、時々スルーしてしまう言葉もあるが考え、行動する。細々と記録し保存、友達ともおしゃべりしたりカラオケしたり。先に認知症がひどくなった主人を施設に入れたあとも元気いっぱい。でも糖尿病になり食事をコントロールできる「マンション」生活。家族に支えられながらも、友達に手紙を書いて近況を知らせたり、明るく過ごしている。認知症・施設というと家族の目で描かれることが新鮮だった。
読了日:08月05日 著者:朝倉 かすみ
星落ちて、なお星落ちて、なお感想
河鍋暁斎の娘とよ(暁翠)が絵の道に進みながらも、父のように奔放にもできず技量も高まらないと、苦悩しながらの様子が描かれる。明治から大正と時代も変化し大和絵、日本画の中に西洋的なものが注視されていく。狩野派の暁斎をどう乗り越えていけるのか、時代の流れと画風との鬩ぎ合いの苦しさ。この苦しさを娘にも味わわせるのか。暁斎の最後を仕切った清兵衛に気付かされた。人は喜び、楽しんていいのだ。生きる苦しみ哀しみと、矛盾しない。人の世が苦悩に満ちていればこそ、たった一瞬の輝きは生涯を照らす灯となる。
読了日:08月01日 著者:澤田 瞳子
読書メーター

5月の読書記録~5冊・1486頁

6 6月

5月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1486
ナイス数:190

梟のシエスタ梟のシエスタ感想
主人公は吉川?「梟のシエスタ」なら梟の袋井?大学の教授たちを巡る物語。吉川が困った状況になってくると、袋井が登場してくるというパターンだ。吉川を救っているのか困らせているのか。袋井は善人なのか悪人なのか。この大学をどうしようと袋井は考えているのか。フクロウのように昼夜逆転の袋井の真意がなかなかつかめない。「ほお」と言いながら何を考えているのか気になったまま終盤。学長選挙、学部再編の中で誰が動かしているのか。フクロウ?カラス?それとも。フクロウはシエスタ(昼寝)を取るのが狙いだったのか?
読了日:05月29日 著者:伊与原 新
MR (幻冬舎単行本)MR (幻冬舎単行本)感想
天保薬品のMR(医薬情報担当者)の紀尾中たちが、薬の開発に関わる大学の教授たちの協力を得ながらライバル企業と競う様子に驚くことも多かった。「患者ファースト」か「企業の利益優先」か。一線を画すことはできないにしても、薬害だけは避けてもらいたいものだ。新薬開発でどうデータを集めるのか、処理するのかも興味深かった。ライバル企業につく教授の動きにも目が離せない。社内も開発費用や昇進を巡る動き。社長の「患者ファースト」の精神で乗り越え成果を上げてきた紀尾中たちのエネルギーはすごい。そんな彼を待っていた結末!
読了日:05月27日 著者:久坂部羊
キネマの神様 ディレクターズ・カットキネマの神様 ディレクターズ・カット感想
ゴウさんの初監督での緊張ぶりが目に浮かぶようで、またその後が残念だった。テラシンさんとの関係がどうなるかと心配したが、ゴウさんの人柄なんだろうね。淑子さんの「あの人を幸せにしてあげる」「一緒になって後悔する方を選ぶ」と言い切るってすごいね。その後の生活を見ててもドンと構えているようで、淑子さんの強さ、ゴウを信じる力が半端ない。映画を生きていく上でのバイブルにする強さ。孫と一緒にかつての脚本を再生して見事受賞。もう、最後は嬉しくて泣けてきちゃった。この作品が作られた経緯もいいね。
読了日:05月18日 著者:原田 マハ
流星シネマ流星シネマ感想
「流星新聞」の太郎は、一体どのくらいの取材や記事を書いているのか、その苦労の様子が見えない。でも、かつて居たという鯨のことが次第に話題の中心に収まっていく。都会の「ふきだまり」のような崖下の仕事場には、自由に街の人達か気楽にふらっと立ち寄れる憩いの場でもあり情報が集まる場でもある。気分転換もできる。鯨との関係が、人々の何気ない言葉から、一つに集約されていく。吹き溜まりは情報の吹き溜まりにもなり、皆の生きがいを高めるエネルギーの集積・発信地にもなっていきそうだ。
読了日:05月14日 著者:吉田篤弘
ほたるいしマジカルランドほたるいしマジカルランド感想
改札を抜けると529歩で到着するマジカルランド。500歩でも530歩でもない。なんで?楽しくなりそうな物語のはじまりを感じてしまう。社長のほとんどの指には指輪。なぜこれほど石にこだわるかは最後になって明かされる。マジカルランドで働く人たちが以前から持っていた悩みが、この職場、社長の方針によって生かされていく。画一的な採用ではなくその人の良さを仕事の中で生かしていこうとするマジカルランドは、楽しみに来ている人たちばかりでなく、働いている人たちにも、幸せを与えている。すべて違っているからいい。
読了日:05月05日 著者:寺地 はるな
読書メーター

2月の読書記録~6冊・1709頁

19 3月

2月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1709
ナイス数:227

羊は安らかに草を食み羊は安らかに草を食み感想
発刊後1ヶ月で読め、これほど感動を覚えた本も今までなかったのでは。満州手の過酷な体験を織り込みながら、生きながらえて帰国した女性の物語。認知症になった妻への夫の思いやり。友とともに過去をめぐる旅をしながら、自らの人生を振り返る同世代の女性たち。80歳で仲良く旅ができる仲間がいて、益恵さんも幸せな人だ。いやその幸せな生活を過ごすまでの人生がどれほど大変なものだったか、涙なしには読み進められなかった。歴史の教科書ではわかり得ないことだ。このような小説が広く多くの人に読んでもらいたいものだ。
読了日:02月24日 著者:宇佐美まこと
推し、燃ゆ推し、燃ゆ感想
この本で初めて「推し」という言葉に出会った。勉強ができないとは言うものの、アイドルを推すことに精一杯生きているあかりの姿がいじらしい。好きなアイドルをグループの中で中心になるようにグッズを買いまくり投票する。こんなことができたらいよいよ熱が高まっていくだろうね。そんなアイドルが不祥事を起こして、炎上する中でも支えようとするあかりの一途さ。なのに突然の解散、引退をされると、推して来たものの喪失感は大きいね。「背骨を失う」とは!
読了日:02月20日 著者:宇佐見りん
オルタネートオルタネート感想
LINEのような高校生限定のアプリ「オルタネート」。思いを話し合ったり、マッチングに利用したり。 新見蓉の調理部員として先輩とそして次には後輩とワンポーションという高校生料理対決に臨む場面が、一番よかった。その対決の中に示されるテーマでよくイメージできるものだ。それを料理に生かすというのだから。面白そうな番組だ。出版から2ヶ月で5刷というのも、作者がNEWSというだけでなく、若者の感性や料理対決番組の様子、そこで蓉の心の動きをうまく描いているからだ。父親もそのように記憶を呼び戻されると嬉しい限りだ。
読了日:02月18日 著者:加藤シゲアキ
この本を盗む者は【電子特典付き】 (角川書店単行本)この本を盗む者は【電子特典付き】 (角川書店単行本)感想
書物の蒐集家の御倉館で起きる不思議な話。本が盗まれて以来、閉館された。本への興味がない深冬は、館を守るひるね叔母を訪ねるあたりから物語が動いていく。5話で構成され、蔵書に仕掛けられた呪い?から盗んだ者が捕まるまで、その本の世界に迷い込んでしまう。深冬は真白とともに切りをつけていく。読書は物語の中に我が身をも導いてくれる。その様子が本書でもあるようだが、その呪いは誰がどのように仕組み、なぜ狐、深冬は現実世界に戻れるのか、最後まで楽しめる。
読了日:02月14日 著者:深緑 野分
晴れ、時々くらげを呼ぶ晴れ、時々くらげを呼ぶ感想
クラゲを呼んで降らす?!何とも変わったことを思い立ったものだ。世の中の理不尽に対してテロを起こそうと。小崎のクラゲ乞いに付き合うことで、同じ図書委員の越前亨の亡父への心のわだかまりがしだいに解けていくのが楽しめた。小説のタイトルもよく出てきて、またそんな本に巡り会えたらいいなとも思った。それにしてもクラゲの世界も未知なものも多そうだ。不老不死のクラゲもいるようだ。わだかまりが最後になって一気に解かれていった。何かに打ち込む姿は人を成長させるね。亨もいい作家になってゆくのだろう。
読了日:02月09日 著者:鯨井あめ
52ヘルツのクジラたち52ヘルツのクジラたち感想
タイトルに?そういう周波数のクジラがいるという。人の可聴域は20Hz〜20kHzだそうだから、52Hzはなんとか聞こえそうだが。アンさんにキナコと呼ばれた貴瑚。親の愛情どころか辛い過去を抱えたまま、アンさんや友達に救われた。キナコも自立できかけた。自分以外の人は自分を救ってくれる存在でもあるが逆の場合も。そんな自分も人のために何かしようとすると強くなれるものだ。声掛けや共に考えてくれる人によりさらに強く。耳を澄まさないと聞こえない声を聞き取り、海の底でもがきつつ光を見ようとする貴瑚らを応援していたい。
読了日:02月04日 著者:町田そのこ
読書メーター

2月の読書記録ー13冊、3230頁

28 3月

2月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3230
ナイス数:448

夏物語夏物語感想
姉巻子の豊胸手術、その娘緑子、夏子が小説を書き、他人の精子をもらって子どもを産むAID(非配偶者間人工授精)を考えるようになったり。幼少期の苦しい生活と家族のことから始まった物語は、初めて考えさせられることが多かった。豊胸手術とか整形とかしないとしあわせになれないのだろうか。不妊治療の話題は聞くこともあるが、AIDも問題や困難さも抱えながら行われているというのを知った。いろんな内容が描かれすぎて、AIDがぼやけた。
読了日:02月04日 著者:川上 未映子
流浪の月流浪の月感想
更紗と佐伯文との物語。こんな展開に初めて出会い、私も流浪の世界に入ったみたいだ。ストックホルム症候群という言葉を初めて知った。更紗の亮に対する行動に何度も歯がゆさを感じた。真実が事件という形で扱われ興味本位に捻じ曲げられネット社会に。それを載せる人、それに反応する人。ネット社会は役に立つ情報も多くあり頼りにしているが、人を貶めることに加担する人たちにはうんざりしてしまう。社会の声に一線を引き、自分たちの生活を歩もうする更紗と文にエールを送りたい。文のカフェcalicoの意味を知り、最後に納得。
読了日:02月10日 著者:凪良 ゆう
medium 霊媒探偵城塚翡翠medium 霊媒探偵城塚翡翠感想
ただのしがない物書きの香月史郎は城塚翡翠という霊媒の娘と共に、様々な事件を解決。警視庁捜査一課長警部の鐘場正和。こんな登場人物の組合せに興味が惹かれとても面白かった。4話それぞれよかったが、その間にあるインタールードなるものが、しだいに不気味さを与えてくれる。そして最終話!こんなことになっちゃって!と。霊媒師の翡翠さんがとても魅力的。香月もよく推理を組み立て、さすが作家と思いながらずっと読んでいたものでした。いやぁ、よかった。次の孤島での話も読みたいものです。
読了日:02月16日 著者:相沢沙呼
小さいコトが気になります (単行本)小さいコトが気になります (単行本)感想
面白い視点のエッセー集。読んでいて、「うん、あるある、そんなこと」と思えることが多かった。自分自身がどんなことを気にしてるのかを書き出してみるのも面白そうと思う。ただ、どれほど書き出せるものか、ほとほと心もとない。猫を見たらどうするだろうかと見てしまったり、家の庭にどんな花や木があって、どんな花が咲いてるのか、いつも見てる。田舎だからコンビニやデパートでのチェックやウォーキングはできないけど、道端や山の中で草花に出会えるウォーキングはできる。日常の幸せですね。
読了日:02月20日 著者:益田 ミリ
すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)すーちゃん (幻冬舎文庫 ま 10-2)感想
自分を変える。新しい自分を見つける。いつも日記がそばにある。自分を見つめる、見つめ直す、それを強く意識すると、日記も描きにくくなりそうな気もする。ありのままの自分と過ごしていく。このありのままというのも、これを読むと、揺らいでくる。私の「ありのまま」ってどうなんだろう?
読了日:02月21日 著者:益田 ミリ
【第162回 直木賞受賞作】熱源【第162回 直木賞受賞作】熱源感想
サハリン生まれのアイヌの熱き人生が描かれていた。巻末にある参考文献など実話をもとにしたフィクションだ。主人公たちアイヌの人々は、ロシア人、和人(日本人)との狭間で、そして時代の大きなうねり、戦争もある中で、未来への道を力いっぱい切り開いてる。アイヌの文化を記録に留めようとするロシア人や日本人。アイヌの文化を引き継ぎながらロシアや日本人との関係を気づこうとする人々。南極探検白瀬隊の一翼として犬橇を操る主人公たち。今まで歴史の中で知り得なかったアイヌの人々の活躍が伝わってきた。
読了日:02月23日 著者:川越 宗一
草笛物語草笛物語感想
「蜩ノ記」はまだ読んでいないのだが、これは羽根藩シリーズの第5弾だという。主人公颯太と同い年の若き藩主吉通の活躍が目を引く。折りに触れ過去の人物・事件のことが出てくるので、これ以前の作品も読んでみたくなる。藩の勢力争い、江戸時代の女性の生き方、武士・家来としての生き方、藩主としての歩む道、いろんな視点で楽しむことができた。「草笛」は「友を呼ぶため」に吹く。これが終盤に生きてきた。藩主の判断や颯太の活躍に感動の涙。
読了日:02月25日 著者:葉室麟
生きていてよかった (角川文庫)生きていてよかった (角川文庫)感想
相田みつをさんのカレンダーが何年も我が家にはある。日めくりカレンダー。何年でも使える。見るたびに「そうだなあ」と思う自分がいる。この本も何年も前に読んでるはずだが、頭に残っていない。残っていれば、もっと素晴らしい人間になれるのだろうが。何度出会っても、自分を振り返らせてくれ、ありがたい。生きていてよかった、と思う。「〜のに〜」「おかげさま」これからも我が身を振り返るのに、心に留めたい言葉ばかりだ。この書にまたほっとさせられる。
読了日:02月25日 著者:相田 みつを
猫の贈り物 (講談社文庫)猫の贈り物 (講談社文庫)感想
ミセス・ヴィと暮らす猫の日記。猫が小さな町の人々の様子を書いている!ある日などは「寝た。」とだけ。中には猫に臭い息を吐く人も。猫と仲良くなるには猫がしてるように「お互いに鼻をつけて、吸う」ことだと教えてくれる。近所の人々の穏やかな様子、喧嘩の様子、年取って思うようにならない人の様子、近くの犬の様子など。「犬は考えたりしないが猫はいつも考えている」のだと。終盤はミセス・ヴィのできごとで猫たちも大変なことに、そして、・・・。
読了日:02月27日 著者:リー・W. ラトリッジ,Leigh W. Rutledge,鷺沢 萠
デュークデューク感想
デュークなどの挿絵のついた小さな本。いきなりの書き出し。本のタイトルなのに。ページ番号もついていない。かわいいモップのようなデューク。この女性のやすらぎであったろうデューク。仕事の疲れも嫌なこともみんな忘れさせてくれてたんだろう。優しい青年。深い目で見つめてくれ、楽しいところへ導いてくれ。ああ、この最後、なんとも言えず、心を温めてくれた。ペットは家族。いや、親、兄弟以上かもしれないね。
読了日:02月27日 著者:江國 香織,山本 容子
ジュルのしっぽジュルのしっぽ感想
初猫の作者。それも野良猫。近所の人に「病気だから触っちゃだめ」と言われながらも。鼻水じゅるじゅるの猫。そんな猫を気にかけ家に、そして検査も。「猫エイズ」と。わが家にも猫エイズの子もいた。ご主人の「失う悲しさよりも、もらった幸せの方が、ずっと多かったよ」の経験談に、涙を誘われる。猫との旅のコツや猫の保護も記されていた。ペットショップは諸外国から見たら「動物虐待」だとも。我が家で関わってきた猫たちは、元野良猫1、貰い猫1、猫の里親2、野良猫4、という経歴か。期間の長短はあるけれど。
読了日:02月27日 著者:山崎 花奈
ねこのジョンねこのジョン感想
猫の赤ちゃんたちの間に、一匹だけ少し変わった猫ジョン。ジョンは家の前で拾われたもの。その他の猫からは、変わった猫と仲間はずれに。でもその中でそばに寄り添ってくれるリズの存在が支えに。大きくなっていくうちに鳴き声も体つきも変わっていく。アヒルも、自分も鳥だけど飛べない、ニャンがキャンでもいいじゃないか、と。違っても一緒に過ごし、認め合うことの大切さが描かれていていい。
読了日:02月29日 著者:なかえ よしを
赤い指 (講談社文庫)赤い指 (講談社文庫)感想
加賀恭一郎の犯人を特定する力量は凄いものだ。主人公だから当然といえば当然なんだが。少女、認知症、親子関係、いろいろな要素を描きながら進んでいく。加賀の凄さは犯人を特定し逮捕することだけでなく、その犯行を通して当事者たちに、何がかけていたのか、何を大切にすべきだったのかを、自ら思い至らせる、というところにあるようだ。「赤い指」をしていた人の思いをよく描いていた。さらに最後には自らの思いを気づかれないように、周囲の批判にも耐えながら、本人の意思を尊重する姿に、涙を流さざるを得なかった。
読了日:02月29日 著者:東野 圭吾

読書メーター

1月の読書~8冊/2391頁/1日77頁~読書メーター

14 2月

1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2391
ナイス数:418

店長がバカすぎて店長がバカすぎて感想
何というタイトルだ?! バカすぎる店長だが「本好きは他人の気持ちを想像できる人が多い」といいこと言ってる。いやいや最後まで読んでいくとすごいことになってる。契約書店員の谷原京子の日々を追いながら、店長、小説家、社長、営業、神様、私のバカさ加減が描かれていきく。楽しみながら書店や店員の置かれている苦悩も感じた。小説の帯の仕組みはゲラからなんだと初めて知った。書店員の本や小説家に対する思いなども伝わり良かった。それにしてもこの人があの人?たっぷり楽しめた。
読了日:01月28日 著者:早見和真
むかしむかしあるところに、死体がありました。むかしむかしあるところに、死体がありました。感想
昔話を元にこんなミステリーが作られるなんて面白いものだ。5つの昔話も小さい頃読んだだけで終わっていた。絵本だったから話の筋もかんたんだった。それをこのように複雑にミステリーに仕組んでくれ、面白く読んだ。「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「絶海の鬼ヶ島」は特に犯人が意外なところにいた。
読了日:01月28日 著者:青柳 碧人
セバット・ソングセバット・ソング感想
北海道の児童自立支援施設を描いた作品。虐待、犯罪などの理由で送られてきた子どもたちが、この施設での活動を通して、社会に復帰できるようにする。院長の藤城遼平の子どもたちへの愛情のある広い心での接し方に救われる。愛情のない家庭で育てられた子どもたちに最大限の愛情で接しようと、院長自ら先頭に立ち職員にも指導する。仕事だからなのか、いざ自らの家庭でも同じように振る舞うことができるのか、後半で突きつけられる。作中に登場する「パパリンに贈る愛羅武勇」もYou Tubeにあるという。
読了日:01月24日 著者:谷村 志穂
ひみつのしつもん (単行本)ひみつのしつもん (単行本)感想
エッセー集。雑誌「ちくま」で長く連載してるという。いろんな考え感じ方があるものだ。オリンピックが嫌でその情報をできるだけ見ない、ペッパー君などのロボットも嫌いだとか。私はオリンピックを夜中までは見ないが日本ほか各選手が最善を尽くしている姿に感動するし、ペッパー君などがいると声かけてみたくなる。人の名前や以前のことを思い出せないことも多々。読書メーターを登録しかけて「あ、この本読んでた」って多分この本も。「ひみつのしつもん」で「あなたが最近読み終えた本は?」「・・・?」って。
読了日:01月18日 著者:岸本 佐知子
神さまを待っている神さまを待っている感想
家庭環境、親から逃れるために、この小説に描かれるような状況に陥ってる愛ちゃんのような子がいることに気づかされた。たった一日の寝坊で派遣を切られることになったが、もう少し粘れなかったのだろうか。漫画喫茶、出会い喫茶の生活の様子が長すぎ、その苦しい生活の様子を感じることもできた。私としては、雨宮たちの愛ちゃんへの思いや行動、また最後にも出てくる上谷君や和泉さんたちとの関わりやその後などから未来への展望を伝えてほしかった。きれいごとになってしまうのだろうか。
読了日:01月16日 著者:畑野 智美
水曜日の手紙水曜日の手紙感想
生き方を明るくさせてくれる本だった。仕事への疲れ、他人への妬み、自分の人生への悩み、いろんな思いをいだきながら生きている私たち。自分に嘘をつかず、よいと思うことをやり、他人を喜ばせ自分も喜ぶ。水曜日の手紙が、どこの誰か知らない人に届けられ、また自分の元へも届けられる。野辺の花、小鳥たちも人のことを考えてそこにいるわけではないのに、幸せにしてくれる。笑顔は自分や人を楽しく幸せにしてくれる。目に見えるものは減るが、優しさや幸せは人に与えるほど増える、そんなふうに日々を過ごしたいものだ。和顔愛語。
読了日:01月12日 著者:森沢 明夫
みちづれの猫みちづれの猫感想
猫にまつわる7短編。読みながら感動で涙を落とす場面も何度もあった。我が家も8匹の猫と関わり、現在3匹の猫と同居している。子どもが牛乳をやったことがきっかけで飼うようになった猫、猫がなくなり次の猫をもらいにいったり、里親になったり、頼まれて野良猫をもらったり。それぞれの猫にそれぞれの人生(猫生)があった。そして同居人の私たちにも悲喜こもごも、いろんな思いをいだきながら、豊かな日々がおくっている。猫を飼うことにより人は心にやすらぎや生きる力を得ることが、各作品中に見事に描かれている。
読了日:01月09日 著者:唯川 恵
BlueBlue感想
平成30年間を舞台に、児童虐待、無戸籍児、貧困、外国人労働者など社会の闇をえぐり出しながらのミステリーだった。現在の日本国内にも1万人ほどいるのではないかとネットで取り上げられていた無戸籍者。そのため学校や医療、福祉の関わりも持てず、有意義な情報も得られない。外国人の技術研修という名の労働者たちも悪徳ブローカーのいうがままに働かされるというのも酷い。Blueの生活や事件を追う形でいろいろと気付かされた作品だった。
読了日:01月07日 著者:葉真中 顕

読書メーター

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。